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試作品(丸井)
試作品

出来上がった 甘いお菓子に

いっぱいの気持ちを込めて


試作品




甘いモノには目がない俺だけど………

最近は複雑な気持ちでいっぱいだ




『あの…………ブン太君………今日もいいかな?』




俺の悩みの正体………

可愛らしい紙袋を握りしめながら
モジモジと今日も教室に やって来たコイツ。



『おう!すぐ行くから待ってろい!』



俺が  大きな声で返事をすると
恥ずかしそうに  そそくさと去って行ってしまった



………こんな  やり取りは  もう何回目だろう…………





すっかり見慣れた光景にクラスの奴らも

『またか〜』『いいなぁ〜』『ひゅー♪』

…………なんて  いつものように茶化してくる







………………………………そんなんじゃねーのに……





少しムッとした顔で見回すと
クラスの奴らは  あっという間に静かになって


それに満足すると
俺は  足早に  アイツのもとに向かう…………





……………………………………………






俺は甘いモノ≠ノは目がない





………それは  この学校のヤツなら  ほとんど知ってるくらい有名で



その事を知って   突然   教室にやって来たのが   コイツ。





いまのようにモジモジしながら俺の前に現れたコイツは



『あ、あの…………丸井君って  甘いモノ好きなんだよね……!?
突然だけど………私の練習に付き合って欲しいの………!!』



…………と  言ってきて


俺は  その時コイツとは初対面だったし
最初は意味が分からなくて嫌な顔をしてしまったが


よくよく話を聞くと…………

告白したい相手にお菓子を渡したい

だから

お菓子作りの  腕前が上がるまで  味見をして欲しい………というものだった



知らないヤツからの突然のお願い…………
俺は  最初は戸惑ったけど


甘いモノがタダで食べられる

………………なによりコイツが一生懸命だったからokする事にした





それから  コイツが作って来たお菓子を  俺が味見する………



そんな関係が   いまでも続いている…………………








『…………………………美味しくなかった??』





考えて事をしながら食べていたせいか………
知らないうちに険しい顔になっていたらしく

申し訳なさそうに俺の顔を覗き込んでくる



『いや!美味い!!……………そこらへんのケーキ屋にも負けないぐらいだぜ?』



『……良かった…………今日は  上手く出来たと思ってたから………』



  ……………照れ臭そうに自分のケーキを口に運び

嬉しそうに  微笑む




………大人しいヤツだけど……

こうやって笑ってる時     本当にカワイイ





コイツのこんな顔を見てると  …………ついつい  俺も嬉しくなる








でも………





このケーキは俺のために作られたモノではない


…………どこかの誰か  俺  以外の男に渡すための試作品



そう考えると

普段は  限りなく胃袋に入っていく  美味いケーキも

……………なんとなく  複雑な気分で口に運ぶ





『……………………………ふ〜………ご馳走サマ』


『いつも残さず  食べてくれてありがとう…………』


『ま………美味かったからな…………なぁ………お前もう練習なんて必要無いんじゃねぇ?』


『………………そうかな…………』


『……俺なんかに食わせてねーで………本当に食べてもらいたいヤツに食べてもらえよ …………告白するんだろ………?』




……自分で言っておいて  なんとなく胸の奥が疼く気がした







『…………………うん………でも自信無くて…………』





そう言うと   …………うつむいて  さみしそうな顔


コイツをこんな顔をさせるヤツ…………
知りもしない相手に    怒りを覚えてしまう




『…………大丈夫だって!!…………味は俺が保証するし………』






『……………ブン太君が…………そう言ってくれるなら…………
私……………頑張る…………』




『…………おう…………頑張れよ』





俺が  そう呟くと

また   照れ臭そうに笑って  


食べたケーキを片付けると教室に戻って行った………






………………………もう   俺が


アイツのケーキを食べる事も……………

こうやって2人で過ごす時間も無くなる…………






コレで良かったんだ


こうしたら  きっと…………この胸のモヤモヤも消えるハズだ





……………そう   自分に言い聞かせた












…………………………………………………………………………………





あの日   アイツと話してから…………

何時の間にか   もう   一週間たっていた……………






俺は   相変わらず煮え切らない気持ちを抱えたまま……

来るはずの無い人影を求めて…………ボーっとしていた………






そんな様子を見て不思議に思ったのか…………

珍しく  仁王が声をかけて来た





『のぅ、ブン太』




『…………………なんだよ』



『お前らしくないのう…………悩み事か??』



『……………そんなんじゃ…………ねーよ……………』




『ほ〜う??………………ま…………理由はだいたい分かるがなぁ』




『お前に何が分かるってんだよ!!』



『ハハハ……………そう怒りなさんなって…………………
例のあの子…………今日も大きな袋を持って来とったぞ?』



『……………………!!!』








仁王が言っているのは  アイツのことだ………





その紙袋にはきっと…………

告白相手にプレゼントする  お菓子が入っている………!!







そう   思った瞬間…………

俺は  居てもたってもいられず   教室を飛び出した







………………………………………………








『ちょっと待て!!!』





アイツの姿を廊下で見つけると

人目もはばからず大きな声で叫んだ





『…………………ブン太くん………!?』





心底   驚いた表情で振り返る身体を

なりふり構わず   思いっきり  抱きしめた






『…………… な…………!?』





『行かせねぇ!!!!………………告白しに行くつもりなんだろぃ…………俺は……………俺は……………』




『………ちょッ……………ちょっと待って!………えと………!!
とりあえず離して…………!!!恥ずかしいよ………!!!』



『ダメだ!!行かせねぇ!!!!』




俺は   頭の中がグチャグチャで………………わけも分からないまま


ただ

コイツを他の男の所へ行かせたくない……と強く抱きしめた








『…………だから!!!!ちょっと持って!!!!!』










『………………………!!!』



いつもとは違う大声に  驚いて   
抱きしめていた腕の力を抜いてしまう







『…………なんか……………ブン太くん………勘違いしてる……!!』






そう言うと

持っていた  可愛らしい袋を 俺の顔の高さまで あげて

恥ずかしそうに差し出してきた






『コレは……………ブン太くんに持ってきたの…………』




『………………え………??』





『だから…………………私が告白しようとしてたのは………ブン太くん………』






『……………えぇ!?だって   俺は味見だろぃ!?』





『…………ブン太くんと仲良くなりたかったから…………口実………』




『じゃあ………………………』






『……………私のケーキ………………受け取ってくれる…………??』








………………………………………………………



出来上がったお菓子に

精一杯の思いを込めて…………

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