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幼馴染(切原)
幼馴染


自意識過剰で危なっかしくて
………でも  なぜか  憎めない  私の幼馴染


幼馴染


『赤也!早く!!遅刻しちゃうでしょ!!』
『ふわ〜あっ……眠て〜…………まだ寝足りないんだよ………』

………寝ぼけた様子でトボトボ私の随分後ろを歩く

『このバスに乗り遅れたらもう遅刻決定だよ!!』


喝をいれてもヤル気なし…
この  どうしようもないヤツは私の幼馴染……


小さい頃からきょうだい≠フように育ったから
こんな風に一緒に登校するのもいつもの事……

この寝坊グセは幼い頃から変わらず
仕方なく  赤也の朝練が無い日は  こうして
私がこの寝坊助を学校まで連れて行く


それだけじゃない

テスト前に泣きつく赤也に勉強を教えるのも
忘れ物した赤也に教科書を貸すのも
練習の怪我の手当てをするのも
宿題を手伝うのも
…………………全部  私の役目になっていて……

赤也には  いつも  手を焼かされている………



『どうせ遅くまでゲームしてたんでしょ!?』

『朝からガミガミうるせーな〜…』

『起こしてあげてるのにちょっとは感謝しなさいよ!!』

『へいへーい………』

急ぐ気の全く無い返事に
仕方なく  手を掴み  前へ前へと走る……


『おい!引っ張るなって!!』
『いいから、早く!!』


そんな私たちを待ってくれていたように
バス停にはちょうどバス

『待って下さい!!』

なだれ込む様にバスに乗って
乱れた息を整える……

…………………これも  いつもの事……


『赤也のせいでいつもギリギリだよ!!……間に合って良かった〜』

『…へーへー……… 悪かったな……』

赤也はむくれた顔でそっぽを向いている……

『…………そんな態度だと もう起こしてあげないからね!?』


車内は相変わらず混雑している……
もう一本早いバスに乗れればこの混雑もマシなはずなのに……

………チラッと  恨めしそうに赤也を見ると
まだ眠いのか  ボーッとしている……


『……きゃ!!』


急にバスが止まって赤也にぶつかる……

『ゴメン……』


車内は満員
赤也だけでなく、知らない人とも肩がぶつかり合う…
バス停を迎えるごとに密度がドンドン上がってくる……
……………くるしい……


『!!』

………今度は全然知らない人にぶつかってしまった……

『ご!…ゴメンなさい!!』


背が低い上に人混みが嫌い……更に今日は荷物も多い……
混雑した車内は私にとっては地獄のようだ…

その様子を見ていた赤也は
さっきまでボーッとしていたのに

…………なぜか余計に不機嫌そうな顔になった……


『………ったく…迷惑なヤツだな〜』

『ひどい!!私だって好きでぶつかってるんじゃないよ!!
だいたい  赤也が寝坊するから………』

………グイッ


急に手を引かれて壁側に連れてこられた

…………赤也は私の頭より少し高い所に手をついて
私のためにスペースを開けてくれている

さっきみたいに誰かにぶつかる心配もないし
随分  息苦しさもなくなった……


『………ありがと』

『別に……』

お礼を言われたのが気恥ずかしかったのか
赤也はまた そっぽを向いてしまった……

…………いつも  そうだ

普段は口も悪いしどうしようもないヤツ

だけど  テニスをしている時も今さっきの事でも……
………時々   ものすごく頼りになる


それに  なんだか憎めない……


だから、どんなに迷惑かけられようとも
私は……赤也と一緒にいられるんだ………



バスに揺られながら赤也の事を考える……

…………気になって   赤也の顔を覗きこんでみると
しっかり  私を守ってくれている……



……………背   本当に伸びたな……
癖っ毛は相変わらずだけど
テニスやってるからか……腕も逞しい

………小さい頃から一緒なのに……
今  目の前にいる男の子≠ヘ別人のようだ



『赤也…………カッコ良くなったね』


『……………な!!なんだよ急に…!?』

『立海の唯一の二年生レギュラーになったし…………
なんだか遠い人になっちゃったな〜って思ってさ………』

『まーな!!俺はスゴい。天才だからな?』

『はいはい………調子乗らないの』
『いてッ!』

赤也の頭を軽く小突く

赤也は少しだけ拗ねたような様子で
また  顔を  背ける


『……………でも  俺に付いてくるお前は……もっとスゴい……』


『え……??』

『俺って………テニス以外はダメだろ??』
『………………まぁ、そうだね…』

『……だから…………お前が ………………』


『………お前が…………??』


『………………………!!な!なんでもねえ!!』


赤也は顔を真っ赤にさせて
より一層    あさっての方向を向いている

そんな赤也を見たら、
自然に笑っていた…………


………………正直……
私には愛だとか恋だとか…………そんなものはわからない

………でも
この  幼馴染に振り回される生活は悪くない……
そう思ってしまった


……………………………………………………………………


照れ屋でどうしようもないヤツだけど

……………私の大切な幼馴染

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