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いい湯だな(ミソさまへ)


「ねぇ、お風呂行くからってボクまで女装する必要なくない?」


「何言ってんの。公衆浴場ってのは、男湯にメタボなおっさんしかいないモンなの。あんたみたいな子供を一人、そっちに行かせられるわけないでしょ?」


 カロルは嘆きに近い声を発する。隣でリタがニヤリと笑う。しかし、たまには銭湯というものに行ってみたいと言ったのはカロルだったため、後戻りは出来なかった。
 さらにユーリはレイヴンにどこかに連れて行かれ、一人ぼっちになってしまうと女性陣に言われ、あろうことかカロルは女湯に入ることになった。


 女湯には幸い誰もいなかった。カロルは一旦胸を撫で下ろした。カロルはユウマンジュで貰ったタオルを早速巻いて、たちまちタオラーに変身した。


「どう!? ボクもうお風呂はい……れ……」


「あら、カロル。どうしたの?」


「ジュディス、カロルは一応男の子ですよ!?」


 カロルは気を緩めすぎたことを後悔した。ジュディスの裸体は確かに一度レイヴンに連れ出された時に見たが、いざ目の前で見ると羞恥の波がカロルの心に押し寄せた。
 様子がおかしいことに気付いたリタはカロルの目を隠し、ジュディスにタオルを巻くように促した。


「一応カロルは男の子なんだから、大事なとこくらい隠しなさいよ」


「あら、そうかしら。男の子はこういうのを見て大人に……」


「ならない!」


 そんなこんなでなんとかお風呂には入ることが出来た。
 カロルが一番乗りで湯舟に飛び込む。高々と飛沫があがった。


「ったく、行儀が悪いんだから」


 そう言いつつリタはカロルの隣をキープした。遠くでジュディスがクスクス笑う。


「リタも素直じゃないわね」


「そう、ですか?」


「ええ、そうよ」


 そう言ってジュディスも湯舟に浸かりに行った。続いてエステルも向かう。この姿は遠目で見ても、ひょっとすると近くで見てもよく目にする光景で、まさか12歳の少年が居るとは思わないだろう。


「水ってどう飛ばすんだっけ……」


「こうでしょ」


 リタがバシャーとカロルにお湯を飛ばす。うわっ、と情けない声をあげて驚くカロルをリタはケラケラと笑う。
 ジュディスとエステルは少し経つと髪の毛や体を洗うために湯舟からあがった。




 しばらくは女湯に来客はなかったためカロルは気を抜いてリタとはしゃいでいた。
 しかし、カロルの気付いていないところで魔の手はすぐそこまで迫っていた。

 女湯の暖簾をくぐる、一人の少女。少々素っ気ない師匠に溜息を届ける。


「ちょっとくらい……心配してくれてもいいのに」


 明らかに浮かない表情を見せるナン。今にも瞳から涙がこぼれ落ちそうだった。
 そんなとき、脱衣所の扉がカラカラと開く。


「エステル、氷持って来て!」


「わかりました!」


「ここにタオルを敷いておくから、カロルをここまで運んで来てくれる?」


「わかったわ、お願い!」


 カロルの言葉に敏感に反応したのはナンだった。脱衣所の棚からチラリと様子を見ようとすると、タオルを敷き終わったジュディスがナンのほうを睨み付けるように見た。


「あら、盗み見とはいい御身分だこと。あなたも手伝ったらどう?」


 ジュディスの瞳に吸い寄せられるようにナンは進んで行った。間もなくエステルが氷を、リタがカロルを運んできた。
 赤く紅潮した顔。完全にのぼせていた。エステルは袋に氷をつめ、額や首筋、脇のあたりにそれを配置する。さらに貰ってきたうちわをナンに差し出す。


「これでパタパタしてあげてください!」


「はいっ!」




 数分後、カロルは無事に目を覚ました。
 朦朧とした意識のまま、バカという声が頭の中を突き抜けた。




「遅い」


「ごめんなさい」


 外ではティソンが待っていた。あの一件でナンの入浴は大変遅れたため、一時間ほどは待たされていた。
 そんなティソンに対し、凄みを帯びた表情でジュディスが近寄った。


「あら、遅れたのはこの子せいじゃないわ。それに心配だったくせに、その言い方はどうかと思うわ。デリカシーが感じられないのよ」


「なっ、う、うるさい!」


 ジュディスの言い回しにティソンは瞬殺だった。リタたちもそちらに近寄る。


「完全にジュディスの勝ちね」


「そうですね……ホント、師匠はデリカシーがないんだから」


「ところでデリカシーって……」


「エステルはいいから……ほら、あんたも言ってやんなさいよ」


 それは、少し後ろから女性の強さをまじまじと見せ付けられたカロルへの一言だった。ちなみに女装をしているため、ティソンはカロルに気付いていない。


「あいつ、誰だ?」


「…………コーヒー牛乳が飲みたい……な」


 町中にティソンの声が飛び渡ったのは言うまでもない。




 かくして、女装カロルはやはり、強かった。
 あのあと普通なら、普通のカロルなら絶対買ってもらえないコーヒー牛乳を買ってもらったのだから。


「私にも頂けないかしら」


「すみません、わたしもいいでしょうか」


「あたしにも一本。あ、フルーツ牛乳ね」


「師匠、お願いします」


 そして結局女性の力にあっけなくティソンは負けるのであった。



「あんまり見ないで……ナン、笑いすぎ」


「あんたが似合いすぎなのよ! 笑っちゃうわ!」


「ナンもデリカシーなさすぎだよぅ」


「なんか言った?」


「い、いや、何でも」


 扇風機の風に、カロルのスカートがふわりとなびく。もちろんここにいるほとんどの人間に、カロルが男の子だということはばれなかった。


―END―

【あとがき】
申し訳ありません!
駄文&ダラダラ待たせてしまって;


とりあえず、
ボク女の子+タオラー
リタカロ
ナンカロ
ティソカロ
ティソジュディ←
をかいたつもりです;


もうホントごめんなさい;
全身全霊でぶっ叩かれるべきです!すいません……。


相互させていただきホント感謝していますm(__)m


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あきゅろす。
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