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紙ヒコーキ


 テストの点数は、頭が悪い、あるいは、努力を怠っているという証明がなされていた。


「さ、さんじゅう……いち……」


 酷い点数にも程があった。
 三橋は一度、そのテストをくしゃくしゃに丸める。なんだか恥ずかしくて他人には見せられず、すぐに鞄の中へしまった。




「なあ、今日のテスト、何点だった?」


 練習が終わり、三橋は忘れかけていたテストのことを栄口の一言によって思い出された。


「あ、え……その……」


 しどろもどろになってしまったが、正直、テストの一つや二つ、どうってこともないだろうとも思われるに違いない。
 だから、自分がどうして点数を明かしたくないのか、その理由が知りたかった。


「点数でも悪かったのか?」


 当たり前のように答えを見透かされてしまい、三橋は躊躇いつつも鞄からそれを取り出した。


「とりあえず外行こうぜ」


 くしゃくしゃになったそれを渡そうとした途端、栄口が外に行こうと言う。その意図を汲み取ることは出来なかったが、三橋はその通りに部室を出た。
 とりあえず、広い広いグラウンドで、そのテストは開かれた。


「おお……勉強……したのか?」


 その答えに、肯定で返すことは出来なかった。
 栄口は、シワをのばしてそれをある形に折り始めた。


「紙飛行機……だ」


 昔折った記憶はあるが、最近はそうでもない。綺麗に折られた紙飛行機は、夜風に羽を揺らした。


「これを、遠くに飛ばそうぜ!」


 栄口は白い歯を見せる。
 これに乗せて、もやもやごと、遠くへ飛ばした、小さい頃の記憶が蘇る。


「うん! やろう!」


 なんだか不思議な気持ちだった。
 今までの自分は何だったのか。何に駆り立てられたのかわからないまま、誰にも見せないようにしたテスト。


 どうしてだろう。


 恥ずかしさがあるとしたら、その理由はわからない。


「ベンチの上から、あの星に向かって飛ばすんだ。ついでに、でけぇ声で三橋の夢ごと運んでもらおうぜ!」


 ロマンチストな彼は、三橋には夜空に輝く一等星程の輝きに見えた。


 もしこの不思議な感情が、この時を迎えるための道標だったとするなら、あまりにも不可解で、だけどそれは、奇跡に近い結末に導いてくれた。


 三橋が立つ、そこは星空のステージの下。


「絶対……甲子園に、行くぞ!!」


 月明かりに向かう、一つの紙飛行機。
 二人はそれをただただ眺めていた。


「絶対な!」


「うん!」


 熱い約束と共に、紙飛行機は飛びつづける。遠い遠い月に向かって、白い姿は小さく消えて行った。




end.
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後日、そのテストは拾われ……。

とまあ、細かいことは気にしません。
紙飛行機は男子の青春の一つです。テストとか、いらない手紙を折って、夢を書いて飛ばします。

公式的には、栄口ではなく田島のポジだと思うのですが、僕はこっちが好きなので(笑)


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