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捕えられて囚われて。
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腕が重い。
鉛のような金属の手枷をきつく嵌められて、両腕が思うように上がらない。右手首と左手首をがっしりと嵌めた、にびいろの金属はこの部屋を行き来することのできるくらいの長さの鎖がついていて、その鎖は豪奢かベッドのヘッドにかたく結ばれている。


もう逃げる気力などない。立ち上がる力さえもうなく、ただダラリとベルベットのカーペットに座り込んでいた。


体に纏うものなど奪われて、仕方なく真っ白のシルクのシーツを上からかぶった。


両手首は手枷によって、赤黒く擦り切れて、血が滲み出ていた。
体中のあちこちには鬱血のあとが残されていて、頬には激しく叩かれたあとがまざまざと残っている。


痛みさえもう麻痺して、ただ腰を中心に体が重いと感じるだけ。


カツカツと質のよい靴の響きが廊下から聞こえてくる。そして、カチャンッとよく響く金属音がしたあと重厚な扉が開いた。


あぁ…―もう帰ってきたのか…


ぼんやりした頭で帰ってきた男を見つめる。
男は疲れたそぶりを見せながら、鞄を机の上におき、コート、手袋を順に外していった。


そしてこちらのほうに微笑みながらやってきた…―


「ただいま、綱吉くん。」

男は優しそうに見える笑顔の仮面を被って、俺の血まみれの頬を触った。

「だいぶ腫れてますね…痛みますか?」
俺はカタカタ震えながら、ただ彼を怒らせないように首を横に振った。

そんな俺をみて男は優しく微笑み、俺の腫れた頬に舌を這わした。
ピチャ ピチャと男の赤い舌が、俺の滲み出た血液を舐めとった。その舌は頬から首、首から腕。腕から足まで下がっていき、長い時間かけて、俺の赤を舐めていった。

「…綱吉くん、まだ痛みますか?」
男は贖罪の念を目に映したまま、俺に聞いてきた。

俺はそんな彼のオッドアイを見つめ、ゆっくりと首を振った。

それを見た男は微笑み、唇をゆっくりと近づけ、そっと触れた。
柔らかく温かい感触が口に触れ、ゆっくりと口を開ける。すると彼の温かい舌が口のなかに入り込んだ。


血の味がする…―

俺の血の味…―

彼の口の中に残っていた俺の血の味が口のなかに広がる。
男の舌づかいは優しく、キスは蕩けそうだった。柔らかく、舌と舌を絡めあい、唾液と唾液をまぜあう。
クチュクチュと卑猥な水音も気にならないくらい、温かく気持ちのいいものだった。


男はキス、だけは優しかった。

そう…―


ただキスだけ…―










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