第二話2
随分と長い間、二人で寄り添っていた気がする。小さな体の触れるところは温かくて、心地よかった。
人と寄り添うのはこんなにも安らぐものなのか。
アンナちゃんが小さく、くしゃみをした。そうだ、この子は上着の下は肌着なのだった。
「ドレス、見てこようか」
そう言って、体を離す。
ベランダに行き、染みの無くなったドレスに触れる。大丈夫、しっかり乾いている。
ドレスを抱え、部屋に戻る。
「大丈夫みたい」
ドレスを手渡すとアンナちゃんは少し微笑んだように見えた。本当に大切なものなのだろう。
着るのを手伝っている時に、訊いてみた。
「ドレス、すごく気に入ってるんだね。可愛いし、よく似合ってる」
形をしっかり整える。よし、完璧。
「……ミコトに買ってもらった」
ミコト。周防尊。赤の王。
「大事に、されてるんだね」
アンナちゃんは少し顔を伏せた。どうしたのだろうかと屈んでみれば、染みのあった位置に触れている。
「汚れ、取ってくれてありがとう」
「どういたしまして」
にっこり笑う。完璧な、慈母のようと称された微笑み。
アンナちゃんは顔を上げ、不思議そうに私の頬に触れる。
そうか、私は彼女に完璧を求められてはいないのだ。なんだか気恥ずかしくなって、触れられた手を取る。
立ち上がって、しっかりと繋ぎ直す。
「一回、下に戻ろっか」
問えば、小さく頷いた。
ドアを見据える。
私は、家に帰るわけにはいかない。上手くやらなければ。
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