小説
《2日目》 神楽目線
この数日間は私の中で過去最高になるかもしれない!!だってウキウキが止まらない。
今日は快晴だし、絶好の散策日和だ。
「今日はどこから行くアルか?さくらちゃん」
「そうねぇ、スイーツバイキングとかどうかしら?このページの」
「キャッホー!!」
美味しいもの食べ放題だし、最高だ!!
**
昨日突然かかってきた電話で
くそどSにむさ苦しい野郎の巣窟に呼び出された時は喧嘩売ってんのかとか思ったけど
暇だったから買ってやるか、とぶらぶら行けば、いつものむかつくポーカーフェイスの向こうに姉御が持ってたお伽話にでてきそうなオヒメサマが居た。
さくらちゃんという名前でまさにお淑やかなお姫様って感じできれいで長い黒髪と瞳でにこりと笑っていてそよちゃんにお姉ちゃんがいたらこんな感じかなという人。
しかも一緒にご飯食べてくれて、
夜兎の豪快な食欲(実はまだたべれた!)
にも引いたりしなかった。
万年金欠の万事屋では毎日満足いくまで(銀ちゃん達が悲鳴をあげるので)
食べれない。
しかもうちを潰す気か、とかどれだけ食うんだよォォォォオオ!!この胃拡張娘ェ!とか言ってくる。
うるせー、とか言いつつ地球人よりたくさん食べるって自覚はあるけど私だって一応女の子なんだから大食い大食い言うなヨ、って思ったことだってある。
なら食うなと言われそうで言ったことないけど。
だから昨日サドがいる所為で奢らせるつもりでいつも通り頼んでまだ足りない!と目一杯宣言した時にびっくりした表情のさくらちゃんと目があってやっぱり引かれちゃうんだ、と恥ずかしくなった。
慌てて顔を隠したけどサドが隣でいつもはもっと頼むだろ、とか余計な事言うから殴ってやろうかと思った。本気で。
そしたら、まだ足りないでしょう?気にしなくて良いと笑っていうから女神様が降臨したのかと本気で思った。
運ばれてきた料理に
『会社の経費で落とすにはたまに何を食べたか聞かれることがあって…行儀悪いのだけど神楽ちゃんが食べるものも一口だけいただいても良いかしら?』
とはずかしそうに言うのも普段銀ちゃん達と分けるなんて日常茶飯事だから全然オッケーだし、その後も色々一緒に周りましょうって言ってくれて、すごく嬉しかった。
……のだが、
「さくらさん、こいつの食欲舐めたらいけませんぜ、会社が破綻しまさァ」
本当にこのどSさえいなければ楽園なのに。
「うぜーアル、れでぃーふたりのエスコート真っ当しろ、この犬っころ」
「生憎別嬪なお嬢さんのエスコートは心得てるがメスゴリラのエスコートなんざ習ってないんでねェ」
「あぁん?誰がメスゴリラだコラ」
「あぁ?どう見てもテメェだろうが、お前さくらさんがメスゴリラに見えんのかィ?そいつは傑作だ。眼球取り替えてこい。」
「んだとコラ!このチンピラチワワがァ!」
さくらちゃんの向こうからサドがちょいちょい口煩い事を言うので楽しい気分が半減だ。
隣にいたら絶対に蹴りのひとつやふたつしたいところだがサドの仕事はさくらちゃんの護衛なので
サド、さくらちゃん、私の並びで街中を歩いている。
私はさくらちゃんだけに話しかけたいのに
そちらを見ると憎たらしい顔も見なければいけないので非常に不愉快だ。
いつもなら私の傘とコイツの刀が一戦交えてる所だがさくらちゃんを巻き込むわけにはいかないので休戦。向こうも同じように思ってるのか口は出してくるが手は刀にのびない。
ので、その代わり口汚い応戦は続く。
「大体テメェ散々食っておいて、あれはないだろィあれは」
サド野郎がさっきの店でのやり取りを蒸し返してくる。
お腹の半分位満たしてありがとうございます。と涙を流してお礼をさくらちゃんに言っていた店主にどうだったかと聞かれて正直に『キャベツがしんなりしてたから古いの使ってたダロ』と言っただけだ。まぁ店主も引きつった笑顔浮かべていたケド。
「素直な感想が聞きたいって言われたから言っただけネ」
「ガキか。そこは嘘でも美味いって言えや、面倒だろうが」
お前だってガキだろ!と言い返したいが
さくらちゃんがにっくきコイツと同じ年齢と聞いてしまったのでぐっと堪える。
同い年なのに全然違うネ!!
「確かに建て前も大事だけど、神楽ちゃんがそう思ったのは大事だと思うわ。その意見で改善されるかもしれないし」
「さくらちゃん…!!」
本当女神様アル!私の救世主!
主にお腹のだったが、さくらちゃんが居るからこのむかつくサドと一緒に居るのも耐えられる。
「チッ」
ざまーみろサド!さくらちゃんは私の味方だもんね!
上機嫌で歩いていると前から真っ黒な固まりのような奴が歩いてきた。
「さくら」
「あら、篁」
こいつが《たかむら》か。
私と同じ夜兎というが私と違ってこの快晴の中でも傘や日よけをしていない。細身のストライプスーツに白い手袋で覆ってるだけだ。
「本日はそちらに戻れない。真選組の方護衛引き続きよろしくお願いします」
「沖田でさァ。江戸の街かかってるらしいんで《珊瑚の君》きっちり護らさせていただきやす」
さんご?何の話だろう。
「お前が夜兎の娘か?」
こちらを見てくるさくらちゃんと同じ黒の瞳は片方だけでもう片方は蒼い。…私と同じ。
でも、好戦的ではなさそう。
「お前じゃないね、神楽という名前アル。
何でお前傘さしてないネ。夜兎なのはお前だって一緒ダロ?さくらちゃんから聞いたアル」
「神楽と言うのか。俺は神楽と違って混血だからな。手袋と長袖さえ着ていれば日光に焼かれることはない」
瞳の色が違っているのは、混血だからなのか。確かに肌は白いが私程じゃない。
「さくらを、よろしく頼む。」
「言われなくても守るアル!大事な友達ネ」
「あと、もう少し食べたほうが良い。さくらが昨日少食だと心配していた。今はこれだけしかないが」
そう言ってぽんと渡してくるのは板チョコ一枚。
少食、だって。初めて言われた!
さくらちゃんといい何ていい奴なんだろう!!嬉しくて少し照れくさい。
「ありがとアル!!篁お前いい奴ネ!」
去っていく篁に声をかける。
後ろでサドが超不機嫌顔でツッコミを要請する。神経どうなってんでェ。
とかぶつぶつ言ってたが気にならなかった。
もう本当に気分最高アル!!
***
2015.03.29
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