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Present Novel
電撃トレイン





「別に」





「あの、お名前は!?」





「なんで?」






彼は私を不思議そうに見た。さっきの殺気に満ちた瞳が今はもうない。





「ずっと…

ずっと気になってたんです」




「俺に関わらない方が良い」


私が言うのとほぼ同時に
彼が私に距離を置く。



「‥でも、私は関わりたい。あなたが知りたい。」






私が必死に言うと、
彼は首を軽くかしげて






「困った子だな」







と言った。そして





「俺の、瞳を見たのに、何故関わる?恐くないのか」





と聞いてきた。
気付くと、彼は私の腕を
強く握った。真っ白な細い腕は見た目以上の強い力だ。



「少し、恐かった。



でも、綺麗だと思ったの。
あなたのことをもっと知りたいと思ったの。」






「俺は、君を求めたら
ダメになるんだ。」






「なんで?」







「毎日、俺をみてた」







「気付いてたの?」







「気付かない方が、無理だ」






そう言うと、彼は、
電車から景色を見た。






「俺は君を幸せに
してあげることが出来ない」





「そんなことないわ。
今日、あなたは私を助けてくれた。あなたの声が聞けた。それだけで幸せだった」



「小さな幸せだな」




彼は初めて、
笑った。
笑うと目尻が優しくなった。





「俺がほしいなら
またこの電車に乗れ」






そう言って彼はイヤホンを
し始めた。





そして私の手を離すと
静かに、電車を降りていった。





私の降りる駅は
とっくんのとうに過ぎていた。





私は、
夢を見ているのだろうか?





右腕につく
紫の痣だけが真実を語る。





END.






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