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Present Novel
電撃トレイン




ただ、奪っただけなのに、
それはまるで、何かのマジックみたいに、見る者を魅了した。



それが、
あの人だと気付いたのは
私もあの男も取られてから
数秒後…



「てめぇ…‥「電車の中で暴れるな、気分が悪いんだ」





チャラ男が彼の胸ぐらを掴んだと同時に彼のとても低く反響する声が聞こえた。





「は!?」







ガラの悪そうな高校生が、
物凄く眉間に皺を寄せて、
彼を睨む。



彼は、閉じた目蓋をゆっくり開けて、イヤホンを耳からはずした。





広く生い茂る草原を
思わせる






真緑の瞳だった。







「俺は、すこぶる機嫌が悪いんだけど、






あんたがこの手を離さないなら、手を出すよ」






緑の瞳で、彼が高校生を
見る。射ぬくような、殺気に満ちた、瞳‥。
その瞳に見られた者を恐怖に陥れるそんな殺気に満ちた、瞳。





「くっ…」







チャラ男はその眼を見てから何も言えなくなって静かに手を離した。


そして私の方を一度見ると
避けるように、去っていく。




彼が、チャラ男を見送って
ため息を一つ吐くと私に、
単語帳を渡して静かに戻ろうとした。




「っ、ありがとうございます!」






私がそう言うと、彼は
私の顔を見た。






透き通る緑だった。



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あきゅろす。
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