Present Novel
白昼夢ですから
「シン達は帰るの?」
「まだ居て欲しいの?」
クリスが寝ているせいか、シンが悪戯っぽい表情で笑う。そんな顔も美男子だ。
「…帰っていいわよ」
「じゃあ帰る〜」
素直にシンが従う。少しだけその言葉に寂しいと感じる自分がいる。
「クリス帰るよ」
「んん」
クリスはゆっくり瞼を開けると眠そうに両手で目を擦った。
「もう帰るの?」
クリスがシンに聞く。
「だって、願い事、叶えただろ?叶えたら帰るって、言っちゃったしね」
『まだ居て良いよ』
という言葉は言えない。私は無言で2人の会話を聞いていた。
「あ、のりちゃん」
「ん?」
「僕達、もう1つ魔法をかけたんだよ」
「何を?」
「ヒミツ」
そう言って、2人は手を振って風のように消えた。‥‥やはりあれは夢だったのだろうか。長い長い夢でも見ていたかのように、2人はスッと消えて、私はいつもの特に代わり映えのしない、普通の生活に戻った。
クッキーは未だ渡せてはいない。
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