Present Novel
白昼夢ですから
「じゃあ、この願い事、言ったら帰ってよね」
「わかった。前向きに考えてみる」
「考えてみる〜」
クリスがさっきの涙は嘘だったかの様に楽しそうに声を弾ませシンと同じ言葉を言う。そこは無視して私は口を開いた。
「じゃあ、すっごく美味しいクッキーの作り方を教えて」
「へ?」
シンとクリスがキョトンとした顔をしてこちらを見る。
「何よ」
「そんなちっぽけな願い事で良いの?」
「良いのよ。それにちっぽけじゃないわ。これで私は終わりにするの」
「何を?」
クリスが瞳をこれでもかとキラキラさせて言う。金髪もキラキラしている。
「何をって…恋をよ」
私が小さく言うと、シンとクリスが同時に立ち上がって更に瞳を輝かせた。
「のりちゃんっ!」
「ん?」
「恋、してたんだねぇっ!」
「…悪かったわね‥‥似合わないことして」
私がふてくされた様に言うと2人は首が取れるんではないかというくらい、左右に首を振って、笑顔になった。
『まかせて』
そう言うと2人はポンと手を打ち、魔法の呪文みたいなものを唱え始めた。
「はいっ。のりちゃんはこれでとっても美味しいクッキーが作れりよ」
「作れるよ〜」
「なんだか嘘っぽいわね…」
そんな会話をした後、一階のキッチンでクッキーを焼いてみることにした。至ってシンプルなバタークッキーを。そして出来たてを二階の自分の部屋に持っていくと、
2人は待ってました、とばかりに試食を始めた。
「うわっ美味すぎ」
「本当?」
「本当に美味しい!」
「良かったわ」
そんな会話をしていたら、シンがクッキーを片手に持ちながら、
「そう言えば、何で恋を終わらせるの?」
と聞いてきた。
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