Present Novel
白昼夢ですから
「でも私達はこの服が似合うからこの服のままが良いわ」
「そう、何でも似合っちゃうけど、この服が一番良いの!」
2人が自分達を少し褒めながら反論する。私は「またか」とため息を一つする。
「ねぇ、私、耐えられないの」
素直に言ってみた。
「だから住ませてもらっているお礼に何でもするよ?」
彼‥‥シンは私の右手を両手で握って瞳を輝かせながら言う。私はそっぽを向いてシンの手を払った。
「また、魔法とか言うんでしょう?‥‥私、そういうの信じてないの」
「のりちゃん、本当に何も望みはないの?」
彼女‥‥クリスは悲しそうな顔をする。こんなところで、情に流されてたまるものか!
「悪いけど、本当に大丈夫なのよ。だから自分達の世界に帰ることだけ今は考えて」
「何か願い事を言ってくれないと、心残りで帰れないよー」
クリスが泣きだす。女の私から見てもこんなに綺麗な女の子の涙は卑怯だ‥罪悪感が生まれてくる。
「‥‥だから…」
「のりちゃんっ!」
「何よ?!」
シンに名前を呼ばれて顔をそちらに向けると、真剣な顔をしてシンがこちらを見ていた。
「僕達には魔法しかないんだよ」
シンは多分、私より2つくらい年下だろう、…こんなに綺麗な顔で見つめられると夢といったって、心臓がドキドキしてしまう。
「そんなこと言われても…」
「のりちゃーん」
クリスが追い討ちをかけるかのように、更に泣きだす。再びシンが私の右手を両手で握りしめる。
「はい、願い事〜」
「じゃあ、2人共、魔法で私の部屋から出ていって。私、一人になりたいの。」
「あー、それだけはパス」
「はぁ?」
「ここ居心地良いし、のりちゃんの勉強の邪魔はしないよ。」
「いや、もう既に…‥」
『貴方達の存在が邪魔』
とはさすがに口に出しては言えない。私はまた小さく溜め息を一つついた。
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