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Present Novel
3000HIT企画小説番外編




陽子さんの元彼は、
爽やかそうな人で、とても陽子さんに怪我をさせてたイメージなんか全く感じさせない雰囲気の人だった。




何を今頃話してるんだろうか、と気になっても




陽子さんの代わりに、こっちを手伝わなきゃいけなかったので、陽子さんが帰ってくるまで、ひたすら注文をとって運んだりしていた。途中で覗き見することは許されない。





それから約10分後に陽子さんがやってきた。






「どうでした?」





「何が?」





陽子さんが俺に聞く。




「いやー、話どーだったのかなって思ったんですけど。」





「あ、それね。
ちょうど良いや。てっぺい君も来て」





そう言われて陽子さんに
腕を掴まれながら、さっきの元彼のところまで、連れて行かされた






「英治。」





陽子さんが、元彼の名を
呼んだ。いつも呼んでいるようなスムーズな言い方だった。






正直それだけで、
少し胸がぎしぎしと痛んだ。これがいわゆる嫉妬ってやつかな…





「陽子。」





陽子さんに、英治と呼ばれたさっきの男性が陽子さんが掴んでいる俺の腕を見る。目がスッと細くなる。そしてまた笑顔に戻ると





「彼が…どうかした?」




と聞き、


「私、この子がいるの」






その質問に陽子さんが躊躇う事無くさらりと言った。俺は意味がわからず、黙っていた。すると、




目の前の男は、再び軽く目を細めて俺を見た。






「…俺はもう、あんなこと陽子にやらないよ。

だから帰ってきて」



と俺の存在を完全に
無視した。(くそやろう)



「残念だけど、私にとって貴方は過去の思い出なの。今さら戻ることはないわ」




「あ、あのー…」



俺が口を挟もうとすると



「絶対にきみを傷つけない。俺達はまだ幼かったんだよ。




今なら、やり直せるよ」






と男が、陽子さんに向かって必死になって言う。
(またもや、俺の存在無視)




陽子さんは涼しげな顔で





「私も本当に好きだったよ、英治、今までありがとう。



でもやり直せるとかの問題でも私達がまだ幼かったとかそういう問題じゃ今はもうないの。




私は、今、素敵な人に出会ったの。英治がどんなに言っても今の私にはてっぺいがいるのよ。





ごめんなさい」






そう言って
いつもなら舌を出して笑う陽子さんが静かにお辞儀をした。





精一杯の今までの感謝の
気持ちを誠意で表しているように見えた。





「もう、戻ることは絶対に…ないのかな」


男が呟きに近い声で聞いた



「…ごめんなさい。もう、
それは、ないわ。」



陽子さんが、
苦しい顔で言った。




「そうか。





陽子。








幸せにな」






英治という男性が
お世辞にもうまいと言えない精一杯の作った笑顔で笑って、単語だけに近いセリフを言った。




この人の表情からも
本当に陽子さんが好きだったことが伝わった。





ただ、この人の愛情は
少し屈折していて小さな暴力という形でもあらわれてしまったというだけであり




魅力たっぷりの陽子さんへの感情とかは感じられた。







「本当に、
今までありがとう」









陽子さんが男にそう言って
そして俺の腕を強く握った






陽子さんも、
彼を本当に愛してた





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あきゅろす。
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