愛の歌(完) 4 「陸に…陸にあわなければ良かった。 そうすれば、何事もなく大野さん達と暮らせたのに‥」 「サキ…」 「3日後に大野さん家でパーティーがあるの。 私を皆に紹介するんだって。陸どうしよう。私、大野さん家に絶対住まなきゃならなくなる。 嫌だよ。前みたいに陸と一緒に帰って、笑ったりしたいよ…」 サキは拳を握りしめ俺に訴えかけた。 「サキ」 俺はサキの名を今まで以上に優しく、愛しく呼んだ 「‥俺がお前を助けに行ってやる。3日後のパーティーに絶対行って、お前をさらって…皆に紹介される前に。」 「…その後は?どうするの陸?」 「分かんない…‥今はそれしか考えられない。」 今の俺達の考えなんて その場かぎりの思考にすぎないってことはわかってるんだけど でも希望がある 目の前にはわずかな光が見えるから どうか信じてみたい サキは少し俯いてから真っすぐと俺の目を見つめた 「…うん。待ってる。私、陸のこと、信じてる」 ―陸ノコト 信ジテル― その一言が俺の胸にずしんと響いた 次の日も次の日もサキは学校に来なかった。 時は着々と近づいてきている。 担任は、サキの休みのことを"忙しいんだ…"とその一言で片付けた。 大人なんて実際、 関わりたくないことには首を突っ込まない 俺はそんな大人には絶対なりたくない [前へ][次へ] [戻る] |