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短編
Contrary Couple


アンケ1位
彩雲国A双花



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「お前知ってるか?」

「なにを?」

「藍将軍、最近本命ができたらしいぜ」

「ぇえ!?」



その話を聞いたのはたまたまだった。
偶然に通りかかった時に聞こえてきた言葉。
絳攸は思わず足を止めてその話に聞き入った。




「なんでも1月ばかり町にも下りず、屋敷へ直帰してるらしい」

「なんで…」

「もうお屋敷にいるんだとさ!本命が」

「藍将軍に限って…嘘だろ」




嘘だ、ろ。
絳攸の思考が止まる。
嘘に決まってると思う反面思い当たる節がいくつもあった。
最近は遊んでもないし女の噂も聞かない。
あいつに本命――?
ありえない…
だってあいつは




「こーゆう。こんな処でどうしたんだい?」

「しゅ、楸瑛っ!?」

「そ、そこまで驚かしたかい?ごめんね。」



あまりのタイミングの良さに、驚きすぎた絳攸は床に足を取られ、どすんと尻もちをついた。
楸瑛が焦ったようにあやまりながら手を差し出してくる。
無意識にその手に掴まると、ひょいと引っ張り上げられ




「……なんだ、離せ!」

「んー。もうしばらくこうしていたいんだけど…」

「っ、男なんて抱いて何が楽しいんだ!さっさと離せっ!常春が」

「楽しいよ。絳攸だけは、ね」



何が。ね、だ。
いつもと全然変わってないじゃないか。
絳攸はとりあえず離れろと暴れ、ようやくその腕から解放された。



「残念……どうかしたかい?私の顔に何か付いてる?」

「あ、お前……い、いや何でもない」

「余計気になるよ。どうしたんだい?可愛い人」



”本命”について考えていると、思わず楸瑛の顔をじっと見つめてしまっていたらしい。
いるのか?
そう思いながら。
心のどこかで居るはずがないとも、思っていた。



「……結婚しないのか?」

「へ?」



わざと結婚、という単語で聞いてみる。
そればかりは相手が女性でないとできないから。




「結婚?そんな予定はないけど…どうかしたのかい?ま、まさか絳攸誰かに恋でもしたのかい!?」

「ち、違う!何でそうなる!」

「いや、私を参考にしようとでもしてるのかと思ってね。」

「ありえんだろう。俺は女は嫌いだ!」

「よかった。君が私以外になびくなんて我慢できないところだったよ」



この言葉を聞いてほっとしている自分は悪趣味だ。
絳攸はだんだんと自己嫌悪におちていたが、もう止められなかった。



「じゃなくて。お前だ。」

「私?」

「さっきの奴らが言ってたぞ…ほ、本命が出来たとか…」

「本命?」

「よ、よかったじゃないか!お前もそろそろ身を固めたほうがいい頃だしなっ」



絳攸は自分で言いつつ、居ないと確信している自分。
――なんて嫌な奴だ。
だから次の言葉で頭が真っ白になっていた。



「…ああ。春洸のことかい?」



―――え?
しゅん、こう…?
誰だ?



「彼女はそんなのじゃないよ……絳攸。」

「…ということは…また、遊びか楸瑛?」

「遊びともちょっと違うのだけどね…私の本命は君だから。」



そこで楸瑛は言葉を切り、少しばかり厳しい表情をこちらへ向けた。



「ねえ絳攸。分かっていたんだろう?」

「……なんの話だ」

「私が君を好きだって。」

「っ、」

「それでいて、あんな話を振ってくるなんて酷いね君も」

「聞いてない…っンん」



さっと腕を取られ、唇を奪われれば感じるのは快感だけで。
指摘されたことも全部そのとおりだった。




「言葉にしないと不安かい?」

「、ん。そ、じゃ…」

「でもね。絳攸だって一度も言ってくれたことないじゃないか。私ばかりずるい気がしないかい?」



好きだよ絳攸。
そう言って落とされる口付けは甘くて。
泣きたくなるほど安心する。



「ねえ、絳攸。言ってくれないのかい?」

「またいつか、な」

「楽しみにしてるよ。そのいつか」




Contrary Couple
天の邪鬼な恋人たち




END



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