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愛しき殺し屋
ブラマンジェ3



「ソースの味見するか?」

「良いんですか?」

「良いも何も、そのためにここにいるんだろう?」

「そ……ですね、じゃあください」


小さく笑う凛はソースを少し掬い上げて小さな皿に入れると、真雪に手渡した。


「わぁ……綺麗。こんなに鮮やかになるんですね、これが真っ白なブラマンジェにかけられたら、もっと綺麗に映えそうですね」

「熱いからよく冷ませよ?」


凛に言われた通り細く息を吹きかけ、真雪は出来たてのソースを冷まし口に含んだ。


「うわぁ……すごく爽やかな味です、美味しい。これと一緒にブラマンジェ食べたらと思うと、明日が待ちどうしいです」

「楽しみにしてもらえて何よりだ」


凛は火を止め、ソースの粗熱とるためコンロから下ろした。


「真雪、美味しいのはわかったが。……ついてる」


凛は真雪の唇に指を伸ばし、スッと横に引いた。
僅かについたオレンジソースが凛の指につき、それを自分の口に運んだ。

チュッとノイズをたて、凛はソースを舐め取った。


「美味いな」


凛に唇を触れられてしまってから、真雪はのぼせ上がるように顔を赤くし、その場を動けないでいた。

凜は指を舐めながら視線を真雪にまっすぐ向けた。
忘れていた胸の高鳴りが瞬く間に蘇り、真雪は吸い込まれるように凛の目から離せなくなってしまった。


「凛さん……、ずるいです」

「何がだ?」

「どうして……、どうしてそんな事するんですか?私は……、そんな事されたらまた……」


俯く事も出来ず、真雪は凛を責める。
熱くなる身体や顔は自分でもどうする事も出来ず、一歩、また一歩と近付く凛を潤んだ瞳で見上げていた。


「ずるいのは俺じゃなく、真雪だろ?」

「……私?」


シンクを背にしながら、迫り来る凛を目で追う。


「こんな格好でウロウロして、警戒しろって言ったのに何も考えず俺の前でそんな顔をする」

「それはっ!……凛さんが味見を。それに変な顔をしていた覚えは」


隙間なく真雪の身体に密着し、凛は真雪を囲うようにシンクの淵に手をついた。


「そうかもしれないが、断っても良かったんだぞ?」

「……でも」

「俺の気持ちは、知ってる……よな?」


息がかかる程に顔を寄せる凜は真雪の頬に手を添わせる。

「凜さん……」


凛の顔が真雪に重なる。




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