周りにある別荘とは見た目から違い大きい建物だとは思っていたが、エントランスが三階まである総吹き抜けで、黒い大理石の床が光っている。 自分の小さな足音すら響いてしまいそうなほどの広々とした空間が目の前にある。 黒色の床に対し、金や赤の縁取りがある壁。 あちらこちらには、これみよがしに絵画や西洋の剣。 ブロンズ像に、中国骨董の壺。 バランスの悪い装飾達を見た真雪は思わず嘆息する。 視覚的に疲れてしまった真雪だが、気を取り直し静まり返ったキッチンへ足を向けた。 榊に頼み込んで別荘の見取り図を見せてもらっていた真雪は、頭の中にある地図と目の前の風景を照らし合わせながら、ゆっくりと前に進んだ。 物音すら聞こえない別荘。人の気配が感じられず不審に思いながら忍び足でキッチンを覗くと、メイドが三人折り重なるように倒れていた。 「ヒッ……ンッ!?」 驚き悲鳴を上げそうになるが、何者かに後ろから口を押さえ付けられ、悲鳴は真雪の口内に強引に押し込まれた。 暴れる真雪が手を振りかざせば、それすらも大きな掌によって簡単に掴まってしまう。 頭の中で思い描く光景は、仇であるこの別荘に集まっている人間に掴まってしまった自分。 最悪のシナリオばかりが脳内を占め、浅はかな行動を起こしてしまった自分の短慮さに後悔した。 冷や汗が背中を伝い、自分を覗き込んでくる人物へと恐怖で見開いた目を向けた。 「真雪……ついて来ちゃいけませんよ?」 そう言いながら真雪の口から手を放し、困り顔で笑う榊が小さく声をかけた。 強張っていた真雪の身体から力が抜け、安堵したのも束の間。 「榊さん!……ごめんなさい。けど、自分の目で見ておかないと、決着が付けられない気がして。私の気持ちが納まらない気がして……。お願いします、邪魔は出来るだけしないようにしますから。側にいさせてください!」 真雪は真剣な眼差しで榊を見据え、側にいて事の成り行きを最後まで見たい気持ちを必死に訴える。 榊を飲み込まんばかりの迷いのない瞳に、仕方ないとばかりにゆっくりと頷いた。 |