夕食後、一時間後にリビングに集合とだけ残して榊が先に席を立った。 続くようにライカや和泉も席をたつ。 後片付けを終えた凛、真雪もそれぞれ自室に戻った。 部屋に戻り、再度心を落ち着けるべく、大きく深呼吸をした。 緊張のせいなのか、指先が微かに震える。 「こんな……、今から震えてどうするのよ」 自分に気合を入れるため、両頬を掌で勢いよく挟む。 「いっ……たー……」 少し涙目になったが、おかげで震えも止まり、冷静になれた真雪。 時計を見れば、約束の時間まで後三十分を切っていた。 「そろそろ着替えなきゃ」 今朝用意したワンピースなどを着込み、全身が映る鏡を見る。 「情けない顔……。こんなんじゃ仇の最後なんて見られないじゃない」 少しばかり泣きそうな顔になっていた自分自身に、もう一度頬を叩き、情けない自分を追いやった。 定刻になり部屋を出た真雪は急いでリビングへと向かう。 普段何気なく開けていたドアも、今に限っては重く、そして緊張感が増す対象だ。 それでも、大きく息を吸い込んでリビングのドアを開けると、皆はもう揃っていてそれぞれ示し合わせたような黒い出で立ちをしていた。 いつもと違う雰囲気に真雪は息を呑む。 榊は黒いシャツに黒いベストの黒のスーツ姿。 凛は榊同様だが、ノーネクタイで、黒いシャツを少しはだけさせている。 和泉は黒い半袖Tシャツに、黒のペインターパンツ。 ライカは黒のジップアップのノースリーブに、黒のブーツカットのカーゴパンツ、黒いシワレザーのヒップバッグ。 見事なまでの黒装束に真雪が呆気に取られていると、榊が真雪に声をかけた。 「来ましたか真雪。当初の計画を若干変更して、多少の時間はかかっても構いません。その代わり、じっくりと仕事を行おうかと思うのですが……どうですか?無論ライカも表舞台で一働きしてもらいます」 どうやらこれからの計画の打ち合わせをしていたようで、思わず榊達の話しに真雪は聞き入る。 「おっけー、それの方がじっくり殺れる」 「榊の思うようにするさ」 「僕も問題ないよ、ましてその変更なら大賛成だよ。裏方だけじゃなくて良かった」 皆の賛同を得る事が出来ると、榊の口元がゆっくりと弧を描く。 それに合わせたかのように、男達は顔を見合わせ小さく頷いた。 見た事のない皆の表情に、真雪の気持ちがピンと張り詰める。 |