後片付けを手伝うと言っていた真雪がリビングのソファーでウトウトしていて、今にも眠り落ちそうにしている。 真雪がこんな場所で居眠りをし始めるのは、初めての事。 俺は少しばかり気にかけながら、静かに食器を片し様子を見ていた。 幾度も瞬きしていた瞼が、ゆっくりと閉じていく。 僅かに目を離した隙に、真雪は本格的に眠ってしまったようだった。 片付けを終えて真雪が眠っているソファーに近寄っても、静かに寝息をたてているだけで全く起きる気配はない。 目を閉じる無防備な顔が俺の目の前で曝け出され、言いようのない幸福感が沸き起こる。 いつも妙な事ばかり言って、俺を動揺させる真雪。 それが呑気に昼寝なんかを。 そう思いながら俺は真雪の隣りに腰を下ろしソファーが沈むと、自然と真雪の身体が俺の肩にもたれかかってきた。 一瞬、焦りにも似た何かが俺の心を掻き乱すが、誰も居ないせいなのか自然と綻ぶ自分の表情がなんとも気恥ずかしい。 俺に身体を預ける真雪の肩を抱き、視線を真雪に向ける。 真雪の寝顔を見れば目の下には薄っすらとクマが出来ていて、昨夜は眠れなかったのだろうと瞬時にわかった。 今日でこの復讐にけりがつくと思えば、当然の事だろう。 肩に回した手に力を入れて引き寄せ、両腕で真雪の身体を包み込む。 胸が規則正しく上下に動き、静かな寝息がすぐそばで聞こえる。 真雪の体温や呼吸を心地好く感じながら、徐々に瞼が重くなっていった。 どれくらい経ったのか、ポケットからの微かなバイブレーションで目を覚ました俺は、携帯をゆっくりと開き、少し気怠さの残る声で応対した。 「……どうした」 「真雪を知りませんか?」 「……あぁ、ここにいる。リビングで眠りこけてるぞ」 榊からの電話で、初めて自分が寝ていた事に気付く。 まどろみながらもいまだ目を覚まさぬ真雪の肩を抱いたまま、起こさぬよう小さな声で喋る。 「真雪がそこにいるなら良いです。また一人で出かけたのかと思いまして。しかし珍しいですね、リビングで昼寝とは」 「昨日眠れてなかったのかも知れない。夕方までには目を覚ますだろうから、これから部屋にでも連れてって寝かせてくる」 「そうですか。では、真雪の事お願いしますね」 携帯を閉じた俺は慈しむ目で、真雪の髪を優しく撫でた。 「無茶はするなよ」 |