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愛しき殺し屋
美味しい紅茶の淹れ方


キッチンに着いた凛は、先にお湯を沸かした。


「真雪、まずはお湯は完全に沸騰させること。沸いたらティーポットと、カップにお湯を注いで温めてやるんだ。そしてティーポットが温まったら、人数分の茶葉。今日だと、六人分だからティースプーンで六杯くらい入れて勢いよく、ちょっと上の方からお湯を注いでやる」


凛は真雪に説明しながら無駄の無い動作でカップやソーサーを用意し、沸騰したお湯を茶葉の入ったティーポットにお湯を注ぎ、ダイニングテーブルに座った真雪の目の前に置く。

耐熱ガラスで出来たティーポットにお湯が注がれたことで、茶葉から琥珀色が滲み出た。
茶葉が対流を始め、ティーポットの中でユラユラと舞う茶葉を真雪は静かに見る。


「いつも思いますがこのフワリフワリ舞う茶葉は、見ていて癒されますね」

「そうだな。……蒸らす時間は三分前後、その時ティーコジーで保温してやると温度が下がらなくて良い。あとは最後の一滴まで入れる事。これはベスト・ドロップと言う。」


目を細め、うっとりとした面持ちでティーポットを眺める。

本当はティーコジーをかけたいのだが、気持ち良さそうにティーポットを眺める真雪が喜ぶなら別に良いかと、それを見ていた凛も少し表情が緩んだ。


「九条に何もされなかったか?」

「はえ?」


うっとりと呆けていた真雪は、唐突に口を開いた凛に驚き妙な声音を上げてしまった。


「……なんだその返事は」


目尻が下がり笑いをかみ殺している凛を見て、真雪は少し恥かしくなった。


「急にそんな事聞くから驚いたんです!もう、凛さん笑わないでくださいよ」

「悪かった」


頬を膨らませながらも、恥かしさで顔を赤らめる真雪がなんとも可愛らしく見えた凛は、手を伸ばして真雪の頭を撫でた。


「九条に何もされなかったか?」

「エントランスで会って、そのまま榊さんの部屋まで抱っこで連れて行かれました」

「……そうか」


九条の態度から見ても真雪を気に入ってるのは一目瞭然であったから、この時凛は後で九条に何を言ってやろう、何をしてやろうと画策していた。

芽は早めに摘むに限る、と。


「凛さん、眉間に皺が、それにそろそろ紅茶が」

「……そうだな、持って行くか」


トレイに温めたカップやティーポットなどを乗せ凛がそれを持ち、砂糖やミルクが入った小さなバスケットを真雪が持って榊の部屋へと向かった。





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