「赤ん坊の頃両親が死んで、それからずっと孤児院にいたんだ。その時はしょっちゅう孤児院抜け出しては喧嘩三昧でな」 どこか懐かしそうにしながら喧嘩の日々を思えば身体に武者震いが走り、和泉は落ち着きをなくして手を開いたり握ったりしている。 「そん時の様子見てた榊が、俺の腕を見込んで拾ってくれたんだ。それでここに榊と凛と一緒に住むようになって、16の時からライカが一緒に住むようになったんだ。榊と凛は俺の親でもあり、兄貴でもある。1つ年下のライカは必然的に弟ってなわけだ」 「あ……そう言う意味」 事の真相を知れば、自分の発言が恥ずかしく思える。 和泉が笑うのも無理はない。 「親がいないからって、同情するような目で見んなよ」 「しませんよ、そんな事。ただ私と一緒だなって……私も両親いないし」 微かに陰る笑みを見せた真雪に、一緒にするなと和泉は目の前の頬を抓る。 「お前、ホント馬鹿だよな」 頬を抓られる真雪は和泉の手を掴んで自分から引き剥がし、痛む頬を両手で包んだ。 「だから、一緒じゃないですか。違いますか?」 「あぁ?違うね、お前には両親との思い出がある。俺にはない。でも別に親の思い出とか欲しいとは思わないけどな、榊達がいるし」 「あ……ごめんなさい」 「だー!だから、湿っぽいようなのは嫌いなんだから、しょげるなよ」 失言をしたと俯く真雪の頭を身を乗り出して髪を乱暴に撫でつけ、和泉は大きく息を吐いた。 「俺は今のこの生活がすげぇ気に入ってんの。それに、俺と一緒にしたらお前の親が悲しむぞ」 「悲しむ?」 「親との楽しい思い出がある奴と、親の記憶すらない奴と一緒にしたら、親が悲しむってこと。あー……とりあえずこの話は止めだ、止め。でもな、榊達と出会ってから俺の思い出は一杯あるしな」 「和泉くんの家族は、素敵な人達ばかりですね」 「だろ?自慢の兄貴達と弟だ」 口の端を上げて笑う和泉は、自分が褒められたかのように喜びに満ちている。 榊達に絶対的な信頼を置いてる和泉を羨ましく思え、自分もそうゆう関係になれたらと思いながら微笑を零した。 |