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愛しき殺し屋
朝3


「榊さん、おはようございます」

「どうぞ真雪」
 

ノックをしドアの前で立っていると、榊に中に入るよう促される。 


「……失礼します」


ドアを開けると、榊はソファに座り新聞を広げていた。
ジャケットこそ身に着けてはいないが、朝からしっかりネクタイを締め独特の色気を感じさせる。


「榊さん、本当に昨日はありがとうございました」

「真雪が元気になったのなら、それで良いです」


真雪は榊の言葉に小さく微笑み、再度ありがとうございますと呟いた。


「朝食、出来ました。もう皆さん集まっていますよ」

「そうですか、では行きましょうか」


開かれていた新聞を静かに閉じ、真雪の居るドアに向かった。


ダイニングに行くまでの道のりで、榊に先ほどのライカや和泉の言動を零す。


「ライカくん起こした後に和泉くんを起こしに行こうとしたら、ライカくんが放っておけばいいって。和泉くんを起こした後に、榊さんの部屋に行こうとしたら、和泉くんもやっぱり放っておけばいいって。好き勝手な事ばかり言うんですもの。困っちゃいます」


眼鏡の奥の目を細め、榊は笑みを漏らした。
なぜ榊が笑っているのかわからず、不思議そうな顔で真雪は見つめる。


「真雪はわかりませんか?ライカや和泉の言動の意味が」

「全くわかりません。我侭とも違うような気がしますし。榊さんはわかるんですか?」

「えぇ、わかります。と言うより、見てれば一目瞭然です」


見ていてもさっぱりわからないと言おうとしたが、言葉を飲み込んだ。
単に自分はライカ達を本当に見ているのかと、疑問に思ったから。

ここの住人達は人をよく見ている。
だから自分の気持ちをとても理解してくれている。

真雪は少しでも皆の事を知りたくて、一つの目標を立てた。

“住人観察”と言う目標を。

急に無言になった真雪をジッと見ていた榊は、また真雪は何かを考えていると心を読んでいた。


「真雪、ドアにぶつかりますよ」

「え?ふわっ!」


考え事をしながら俯き加減で歩いていた真雪の目の前にはリビングへのドアがあり、榊からの一声がなかったら頭をぶつけていたであろう。


「えへ……」

「気をつけてくださいね。考え事も良いですけど、ボーッとしてると怪我しちゃいますよ」


ばつの悪そうな表情の真雪は笑って誤魔化し、榊は苦笑いで応えた。





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あきゅろす。
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