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愛しき殺し屋
朝食準備



「おはようございます」


真雪がキッチンに赴けば、朝食の準備をする凛が顔を上げた。


「昨日は眠れたか?」

「はい、お腹一杯になったらホッとして良く眠れました。ありがとうございました」


真雪は凛に頭を下げ微笑んだ。
昨日とは打って変わって、表情豊ないつもの真雪になっている。

それを見た凛は口角を上げ、朝食の準備に再び取り掛かった。


「凛さん、私も手伝って良いですか?」

「あぁ、身体はもう良いのか?」

「寝たらスッキリしちゃいましたから、大丈夫です」


真雪は握り拳を握り、ガッツポーズをして元気な事を表現して見せた。
少しばかり驚いた顔になった凛は口元を隠し、視線を逸らして肩を震わせた。


「凛さん?何が可笑しいんですか?」


不思議そうに首を傾げ、逸らされた顔を見ようと凛に近寄ろうとする。


「……いや、何でもない。じゃあ手伝ってもらうか。今日はシーザーサラダにコーンスープ、きのこのオムレツにトーストだ。……特にすること無いな」

「え?」


キッチンを良く見ればあらかた料理は出来ていて、オムレツを作るだけになっていた。


「もっと早く起きれば良かったですね」


肩を落とす真雪に、凛は静かに何かを考えていた。


「オムレツ……作れるか?」

「え?……た、たぶん大丈夫かと」

「それを真雪にやってもらおうか。俺も手伝うから、ほら」


凛はいつも自分が付けているであろう足首まである、長いソムリエエプロンを真雪に渡す。


「凛さん……。このエプロン凛さんのですよね」

「あぁ、何か問題でもあるか」


しかめた顔の真雪が凛を見つめる。


「凛さんと私の足の長さが違います、……見てください」

ほら、と地べたに裾が付いたエプロン姿の真雪に、凛は思わず吹き出してしまった。


「笑い事じゃないです、身長差どれだけあると思うんですか〜!30センチくらい違うんじゃないんですか?」

「笑って悪かった、今度エプロンを用意しておくから。そんなに拗ねるな」


ブツブツといつまでも何かを言っている真雪の頭に、凛は手をやり、宥めるように撫でた。
いつまでも口元を隠す凛は真雪からも笑っているようにしか見えなく、眉尻を下げて凛の手の動きに誤魔化される。


「……笑わないでください。じゃあエプロンお願いします」

「とりあえずキッチンはいいから。そろそろ皆を……って言っても、ライカと和泉をだな。起こしてきてくれ、メシだって。榊は起きてるだろうが、声だけ掛けてきてくれるか?」

「はい、わかりました」


昨日のような重苦しい空気を微塵も感じさせない真雪は、足取りも軽く皆の部屋に向かった。




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