凛が真雪の部屋に向かい、その背を見送りながらライカは大きなため息をついた。
「はぁ」
「お前いい加減、ため息ばっかつくの止めろよ!」
リビングのソファに小さく丸くなって座っているライカに、和泉が力強い手刀を入れる。
「和泉止めてよ〜、……はぁ」
しかし特に痛がる様子もなく、ただ虫でも追いやるように和泉の手を払った。
こりゃ病気だわと和泉は降参のポーズをして榊にバトンタッチする。
「こんなに他人に懐くのも珍しいですよねライカ。そんなに真雪が気になりますか?」
「そりゃそーだよ!気になるよ。けど……何て話しかけて良いかわからないから。会いたいけど、どうして良いかわからないんだよ……」
しょんぼりとするライカにほとほと呆れる和泉は、風呂に入ると言ってその場を逃げた。
「真雪ちゃんはさ、色々自分で解決しようって誰かを頼ろうとしないんだよ。今日だってそうじゃん、誰にも言わないで御堂尊に会いに行っちゃうし。色々あったけどあんなに元気で……強い子だけど、すぐ泣くのに……本当は弱いのに。女の子なのになんであんなに、傷つかなくちゃいけないんだろうって」
ライカは真雪を想い、頭の中にある真雪に対する言葉を並べていった。
真雪の辛い過去を知っているが故に、かける言葉を見つけられないで一人あぐねいているその姿は年齢よりも幼く感じられる。
「僕が力になってあげたいのに、僕じゃ役不足なのかな?」
膝を抱え頭を垂れ小さくなるライカに榊もため息をついた。
「ライカが役不足なわけないでしょう。真雪の性格です、だからあまり気にしないで」
「うん、ありがと。僕、もう寝るね。……おやすみ」
残る心のわだかまりはライカの気持ちを陰鬱にしてしまう。
晴れない気持ちは自分ではどうすることも出来なくて、固まった身体を解き立ち上がった。
榊の言葉を胸にしまい、ライカはリビングを出て行った。