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愛しき殺し屋
side凛


和泉と二手に別れ、俺は上層階に探しに行こうと思いエレベーターに向かう。

その時携帯が重く振動し、着信を知らせてきた。
榊だと思い、すぐさま携帯を開けば案の定。


「俺だ、榊わかったか?」

『凛、真雪はおそらく603号室にいます。私達も今向かっていますが、貴方達も急いでください。一緒にいた人物が御堂尊かと、もしかしたら逃げられるかもしれません。和泉にも連絡済みです、じゃあまた後で』


携帯を閉じ、到着したばかりのエレベーターに乗り込み6階を押した。


「……御堂尊か」


動き始めたエレベーターの階数を表示するパネルに視線を向け、一人呟き臍を噛んだ。


目的の階に着き扉が開けば、急いで辺りを見回す。

エレベーターはフロアの丁度真ん中にあり、右方向から若い数字の部屋になっていた。


右手の方だと足に力を込め、走り出そうとしたその時。
一つの部屋から車椅子に乗せられグッタリしている真雪と、それを押す男が現れた。


「何をした」


睨みながら男に近づき顔を見ると、榊から渡された資料に添付された写真の男と酷似している。

御堂尊……アイツか。


「アンタ誰よ」

「真雪に何をした」

「アンタさっきの電話の人と違うよね」


御堂は横柄な態度を取り、俺の怒りを煽っているのが目に見えてわかる。

普段の俺ならそんな挑発に乗ることはまずない。
しかし、今回ばかりはそれに乗ってしまいそうになった。

今回の事は真雪の奪還が目的で、御堂尊に手を下している暇もなければ、人目のあるこんな場所で事を起こせば余計な問題まで起こる。

俺は睨み見据えたまま、こみ上げる怒りを抑え御堂に用件を伝えた。


「電話の相手は俺じゃない。だが俺は真雪を迎えに来た。そいつを帰してもらおう」

「何の権限があって?真雪は家に帰るんだから、アンタに関係ないでしょ」


飄々とする御堂は車椅子の前で跪き、眠る真雪の頬に唇を寄せながら俺を一瞥した。

一度は治まった怒りの炎は再燃し、焼けつくさんばかりに俺を包んだ。





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