愛しき殺し屋
sideライカ
「僕も行きたかったなー」
「ライカは駄目です。こんな昼間の人目の付きやすい場所で、死人でも出したら後の処理が大変です」
「……ちぇ。でもさー、格好良く迎えに行きたかったな〜」
「拗ねないで、そろそろ真雪に連絡してみましょう」
榊の携帯から、微かにコール音が漏れてくる。
なかなか電話に出ない事に少し苛立つその時、コール音が止まり誰かの声が聞こえてきた。
……真雪ちゃんに電話する榊の顔が曇った。
榊が真雪ちゃんじゃない奴と、喋っているみたいだった。
どこか事務的で、いつもの榊じゃないような冷たい声。
でも真雪ちゃんの携帯に電話してて……なぜ?
不安だ、胸がざわつく。
悪い予感ばかりが心に渦を巻き、早鐘を打つ鼓動を抑えていた。
「ライカ、和泉に電話を。真雪は603号室にいます、私達も行きますよ。御堂尊と一緒のようです」
自分にばかり気を取られていた僕は、榊が電話を切った所で我に返った。
僕は急いで車を降りホテルに向かいながら和泉に連絡をした。
「真雪ちゃん603号室にいるって、御堂尊と居るみたい。気をつけて」
プツリと電話を切り、僕は急いで走り出した。
どうして御堂尊なんかに会いに行ったんだろう、どうして御堂尊と部屋にいるんだろう。
嫌な目に合わされた真雪ちゃんは、何を考えて御堂尊と会っているんだろう。
どんな思いで憎い男に会うのか、僕にはわからなかった。
けど、どんな理由であれ。
真雪ちゃんが望んで会いに行ったとしても、御堂尊が真雪ちゃんをどうにかしようなんて思っているのなら。
僕がその場で息の根を止めてあげる。
これ以上彼女を苦しめるような事をするのなら、御堂尊は単なる悪に過ぎないから。
榊が何を言おうと、僕は……。
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