愛しき殺し屋
零れた紅茶
「……凛に真雪ちゃんは渡さないからね」
瞳を閉じゆっくり紅茶を飲むライカの発言に驚き、真雪はカップを落としそうになってしまう。
「え!?」
「こっちの台詞だろ」
思わぬ伏兵、和泉の台詞に紅茶を太股に零してしまった。
瞬く間に服が紅茶の色に染め上げられ、鈍い痛みが太股に広がった。
「熱っ!」
一番最初に動いた凛はすぐさま真雪を抱きかかえ備え付けのミニキッチンに連れて行き、互いの服が濡れるのを構わず紅茶の染みた部分を流水で清める。
「大丈夫か?」
「は、はい、大丈夫です。凛さん服が濡れちゃってますし、シンク周りもビチャビチャになってますけど」
「気にするな、これくらい構わない」
抱きかかえられたまま小さなシンクに身を寄り添うような形になっていて、凛の顔が互いの息がかかるくらい近くにあることに気付き思わず顔を赤らめる。
凛の素早い行動に呆気にとられた二人が真雪達に近寄る。
「真雪ちゃん大丈夫?」
「アホだなー、大丈夫かよ」
「紅茶零しちゃってごめんなさい。凛さんもう大丈夫ですから下ろしてもらえますか?」
「着替えた後にでも手当てしてやる。後で部屋に来るんだ」
下半身がずぶ濡れになった真雪を下ろし、凛は濡れたシャツの袖を捲り上げた。
「むー、凛は手当て上手だからその役目は譲ってあげる〜。本当は僕がやりたいんだけど」
「ライカがやったら、グルグル巻きにしちまうから譲るも何もねーだろーよ」
「うるさいなー、不器用で悪かったね!」
ようやく凛の腕から離された真雪は、火傷した部分がヒリヒリするのを感じながら自室へと戻った。
「――っと、着替えってこのクローゼットにあるのかな?」
クローゼットを開けるとシックなドレスから、可愛らしいパステルカラーのワンピースなどギッシリ詰まっている。
「えっ、これみんな、私の……?」
引き出しをあけると下着まで入っていて、サイズを見れば自分が普段見につけているものだった。
軽く眩暈が起こりそうな状況に驚いたが、服どころか下着までびしょ濡れなこの格好から解放されたくて、下着とピンクの膝丈ワンピースに黒いカーディガンを取り出すと早速と着替えた。
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