[携帯モード] [URL送信]

愛しき殺し屋
凛の災難1


今日は朝から悪い事が続いた。


「この有様は一体……」


朝食後に裏庭に来てみれば、九条から貰った薔薇が荒らされていた。

ちょうど蕾が膨らみ始め、これから綺麗に咲くと思ってた矢先。


「誰がこんな事を」


俺は枝が折れている部分を剪定してやり、膨らみかけていた蕾を切り取った。

ため息混じりに切り取った蕾を集めていると、二階からライカが俺に話しかけた。


「りーん、さっきね〜、猫とカラスが喧嘩してその薔薇目茶苦茶にしてたよ〜。すっごい激しい喧嘩で、つい見入っちゃった〜」


身振り手振りで猫とカラスの喧嘩の様子を再現するライカに、俺は何も言えないでいた。……いや。

――見ていないで、止めろ。

と言いたかったが、あまりの無邪気さに何も言えなかった……と言った方が正しい。


キッチンに戻り、切り取った蕾を小さなブーケにして、グラスに飾る。


「これで少しは楽しめるだろ」


細く息を吐き、お茶を飲もうとカップを取り出す。

「……おかしい、ここに置いてたウェッジウッドがない。一体どこに?」


キッチンに置いてあった筈のウェッジウッドのカップとソーサー。

葡萄のレリーフが施されているクウィーンズ・ウェア。

ホワイト・オン・ウェッジウッドブルーの葡萄と蔓のレリーフのバランスが、真雪に似合うと思って用意した。

専用のカップにしてやろうかと思っていたのだが。


それに今朝言ってしまったんだよな。


「真雪、お前に似合うカップを買った。後で見せてやる」

「本当ですか!?凄く嬉しい、楽しみにしてますね!」


真雪が見つけて勝手に持って行く事は、まずない。

じゃあ一体誰が?





[次へ#]

1/12ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!