道化の国 着物デート1 花月が白露と話し込むのを見計らうと、センリは美咲にソッと耳打ちをした。 「これから、倭の国を散策してみませんか?」 「行く!」 美咲は藤の花に負けないくらいの満開の笑みでセンリに答え、センリもニコリと微笑んだ。 「では、こっそり行きますよ」 「どうして?」 尚もヒソヒソと喋るセンリを不審に思うが、美咲もつられて小声になる。 「二人きりで、着物デートしてみたくありませんか?」 小首を傾げ微笑むセンリが美しく、美咲は言葉を失ってしまった。 美咲は黙ったままゆっくりと頷いた。 「では、行きましょう」 センリは美咲の手を取り、その場から足早に去って行った。 「此処まで来れば安心ですね。」 「はぁはぁ、もう少し体力……つけた方が……良いかな……」 センリに手を引かれるまま、その速さに無理矢理ついて行った美咲は、己の体力のなさを嘆きながら肩で息をしていた。 「そうですね、もう少し体力があれば、気を失う事無くたくさん楽しめますね」 「せ、センリ!一体何の話……!恥かしいじゃない……」 謝るセンリは顔を赤らめる美咲を宥め、手を差し伸べた。 「迷子になるといけませんから、手を繋いで行きましょうね」 「うん……」 ギュッと握られた掌は離れないように指先を絡め合い、センリは美咲の額にキスを落とす。 「美咲も綺麗ですよ。倭の住人に見せるのが、勿体無いくらいです。」 何時までも慣れない甘い台詞に美咲は嬉しくもあり、恥かしくもあり、顔を紅潮させてしまう。 そんな美咲に笑みを零し、センリはゆっくりと歩き始めた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |