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道化の国
帰り支度


それからどれくらい経ったのか。マリカは嫌がるマスカーレイドとユーマを引っ張り上げ、フィールドを後にしようとした。


「あんまり長居すると後が怖いからね。美咲また来るわ」


横目でセンリを見て、美咲に微笑みかける。


「俺は別に置いて行っても良い……イテテテッ!マリカ、耳を引っ張るな!」

「ユーマはもう少し空気が読めるようになったらね。子供は帰るのよ」


ユーマの腕を持っていたマリカの手が耳へと持ち替えられ、あまりの痛さにユーマはマリカのなすがままにされていた。


「じゃあ俺は大人だし、空気も読めるし」


マリカの手を巧みにすり抜け、ユーマの慌てる様を楽しそうに眺めてマスカーレイドはお茶を飲んだ。
しかしそんな事は許さないとばかりに、マスカーレイドの首根っこをすかさずマリカが掴み上げた。


「あんたも駄目よ。そんな事しててマスターキーリング取り上げられたら、美咲に簡単に会えないわよ?」


笑うマリカは脅すようにマスカーレイドの耳元で囁く。


「はいはい、わかったよ。じゃあね、センリ。また来るからね、美咲」

「うん、ありがとう。楽しかった、また皆で来てね!」


本当に楽しかったとばかりに笑顔で手を振る美咲の横で、センリは無表情で手を振った。


「是非来てくださいね、マリカ」


マリカ以外来るなと言わんばかりのセンリに、ユーマはニヤニヤと笑い、マスカーレイドは声を上げて笑っていた。
そんな男達に呆れ、マリカは眉尻を下げ思わず吹き出す。


「まったく……、困った男達ね」


わからない美咲は不意にセンリの顔を見上げた。
そこにはいつもと変わらない、優しい顔のセンリが美咲を見つめている。


「どうしました?」

「ううん、なんでもない」


笑い声が漏れる切り裂かれた空間が閉じていくのを、センリと美咲は静かに見送った。




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