「さてと」 マリカは小さなバッグから細い鎖のついた金色の小さな笛を出した。 美咲はその様子を眺めていると、マリカは口に咥えて息を吹きかけた。 吹かれた笛は形こそ笛その物なのだが、音もなく僅かに空気の漏れる音がするだけだ。 「笛?」 口に咥えた笛を外し、マリカは美咲に微笑みかけた。 「すぐに来るわよ。……ほらもう来た」 美咲がマリカを見ていれば、予想通りといった表情をしている。 マリカから視線を外し前を見ると、切り裂かれた空間からユーマが飛び出してきた。 「美咲!……とマリカ、何だ?遊びの誘いか?」 軽快な足取りのユーマは乱れた前髪を掻き上げて笑う。 「今ね、マスカーレイドもセンリのフィールドに来てるの。だから皆で遊ぼうかと思って」 「何だよ……、俺また抜け者かよ」 「違うわよ。私だけで行くつもりだったのに、マスカーレイドがついて来たのよ」 マリカを悔しそうに睨むユーマの手を美咲が引っ張り、早く行こうと促した。 「行こう、ユーマ」 「じゃ、行くか!」 そんな美咲の行動に驚いたユーマは、その腕を引っ張り返して走り出した。 「ちょっと……私を置いていくの?」 唖然とその場に立ち尽くすマリカ。 我に返り美咲の身に危険が及んではセンリに何を言われるかわかったものではなく。 急いで二人を追いかけるように走って行った。 |