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道化の国
怠惰と希望2


「センリ、遅かったじゃん」

「シャワーを浴びて来ましたからね」


先に来ていたマスカーレイドは、カウンターで大きな氷の入ったグラスを揺らしウィスキーを飲んでいた。


「同じ物を」


センリはバーテンダーに注文をし、マスカーレイドの隣りに座った。

薄暗い店のカウンターには小さなランプが灯され、三つあるテーブルには、それぞれ蝋燭が淡い光を放っている。

センリの前にグラスが置かれると、大きな氷の上からウィスキーが静かに注がれた。


「お疲れさん」


グラスの中で氷を回していると、マスカーレイドがセンリの持つグラスと合わせた。


「マスカーレイドは毎日退屈だと思いませんか?」

「ハハッ、何だよいきなり」

「私は退屈です」


センリは氷が音をたて溶ける様子を寂しそうな瞳で眺める。


「希望の光がいるじゃん」


慰めるようにマスカーレイドはセンリの肩に手を置いた。


「いつ出逢えるかわからない、そんな光を当てにして良いのでしょうか」

「それを言ったら夢がないだろ」


呆れ口調のマスカーレイドだが、弱気なセンリがおかしくて思わず口元が緩む。


「何がおかしいのですか?」


マスカーレイドは口元を誤魔化すように、ウィスキーを運んだ。


「センリは誰かの希望の光に逢った事ある?」

「いえ、ありませんね。話では聞いた事があります。マスカーレイドはあるのですか?」

「俺も話だけだな、全く縁がないんだよな」


氷が溶け薄くなった琥珀色をマスカーレイドは舌の上にのせ味わう。
それに合わせてグラスを揺らし、センリも静かに飲んだ。


「他人の希望の光で良いから、逢ってみたいよな。どんな人なんだろ」

「話では筆舌が難しいような人だと聞きますが…。想像出来ませんね」


センリとマスカーレイド以外客の居ない店内は静かで、氷とグラスがぶつかる音だけが響く。





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あきゅろす。
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