道化の国
寝起きの悪戯1
センリより早く目が覚めてしまった美咲。
「初めて……?」
後ろから抱かれた身体を捩じらせ、モゾモゾとセンリに向き直す。
ピッタリくっついた身体から鼓動が伝わり、ふわりと立ち上ぼる香りが、センリの色気を増長させる。
閉じられた瞼から伸びる、黒い睫毛。
美咲は濡れたような艶やかなそれに、おずおずと手を伸ばし指で触れてみる。
「長い睫毛……、綺麗」
サラリと顔にかかる漆黒の前髪を梳き、指から零れ落ちる様に流れる髪をウットリと眺める。
「センリの髪って気持ち良い……」
美咲は掌をセンリの頬に滑らせ、ソッと唇を重ねた。
自分のした事が恥かしくなった美咲は、センリの腕から無理矢理逃げ出し、ベッドルームから顔を紅くして去って行った。
パタンと扉が閉じられたと同時に、センリはゆっくりと瞳を開く。
「あれくらいで恥かしがってては……。まだまだですね美咲」
小さく笑うセンリは、とても楽しそうにしていた。
「私が色々教えてあげますからね。このお礼はしっかり、お返ししますよ」
美咲の温もり残るベッドで、独り言を呟いた。
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