道化の国
独占欲
「マリカの連絡手段はわかったけど、マスーレイドやユーマのもあるの?」
本棚の前で何か探していたセンリは眉をひそめ、美咲を見る。
「ありますが……なぜです?」
「どんなのかなって思って」
センリは持っていた本を机に置き、美咲の座るソファーに腰を下ろした。
「見るくらいなら良いですけど、美咲……まさか欲しいなんて言いませんよね?」
「あ、うん。欲しいとは思わないけど、どうして?」
「マスカーレイドやユーマは貴女に会いたがっていましたからね、美咲の方から連絡があれば、喜び勇んで来ますよ。それこそ飼い犬のように」
なぜか棘のある言い方のセンリに、笑うに笑えないでいる美咲。
「マスカーレイドのはこれです」
小さなファイルを取り出し、開けてみせる。
そこには小さく真っ白な羽が、少々の空気の揺らぎに流されながら綺麗に並んでいた。
「凄い……フワフワして綺麗。これがマスカーレイドの?」
「これを一つ取り掌に乗せ、フッと飛ばしてやるんです。その時に頭の中でマスカーレイドを呼べば来ます」
ワクワクしてきた美咲は、ユーマのも知りたいとセンリにねだる。
「まさかこんな物で、おねだりされるとは……」
美咲から滅多にないおねだりが、自分以外の事で面白くないセンリは、マスカーレイドとユーマが憎らしく感じていた。
羽の並んだファイルを、無邪気に見つめる美咲は何も知らず。
「美咲は、私をストレスで殺せますね」
「え?何か言った?」
フワフワの羽に夢中な美咲の耳には、センリの言葉は届かず。
しかし楽しそうに羽を突っつく美咲が、可愛らしくもあり微笑を零す。
「なんでもありません」
本当に……貴女の一言一言で私は、天にも地にも行ってしまう。
美咲は知らないでしょうけど。
どうしたら、私だけを見ていてくれるんでしょうね。
ね、美咲。
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