[携帯モード] [URL送信]

道化の国
センリ’Sフィールド2


「……希望の光とはこの長い時をずっと側にいてくれる、たった一人の愛する人。そしてその長い時間を共に過ごし、癒してくれる人……」

「それが、私?」

「そうです。私の香りは特別だと言ったのを、覚えていますか?これは私の希望の光にだけ反応を示す物。貴女しか、この嗅覚での官能を味わえないのです」

「でも……他の誰かが反応するかもしれないじゃ……ないの?」


センリは頭を横に振り、悲しそうな瞳で美咲の頬に手を滑らせる。


「美咲はこの国で、誰に会いましたか?」

「え、と……マリカと、マスカーレイド。後はセンリ……」

「貴女には見えないだけで、もっと住人はいるのです。しかし、縁のない住人は貴女の瞳には映ることがなく、更に各々が持つ香りに反応するのは“一人の住人に対して一人の誰か”だけでしかいないのです。ですから貴女に縁のある住人は、現段階で私を含めた三人なのです」

「……」

「貴女と出会う確立は広いこの世界で、一粒の砂を探すのと同じくらい途方もないことなのです。解りますか?たった一人の愛する人を、長い時をかけて探し、待ち続ける事の苦しさが」

「それは……」

「お願いです、私を拒絶するような事はしないで下さい。お願いします」


下げられていた顔が上がると、悲痛な表情のセンリが憂いを秘めた瞳で見つめている。
そんなセンリを見た美咲は心が痛くなった。

遠慮がちに伸びてきたセンリの手に身体を跳ねさせたが、抵抗しようとはせず、優しく抱き寄せられた感触に微かに胸が高鳴った。

僅かばかり芽生えた“愛しい”と思える気持ちを、素直に受け止めようとしていた。

美咲の首元に埋めてきたセンリの頭をたどたどしく撫で、美咲はあやふやな心で想いを態度で表した。





[*前へ][次へ#]

7/16ページ

[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!