「……希望の光とはこの長い時をずっと側にいてくれる、たった一人の愛する人。そしてその長い時間を共に過ごし、癒してくれる人……」 「それが、私?」 「そうです。私の香りは特別だと言ったのを、覚えていますか?これは私の希望の光にだけ反応を示す物。貴女しか、この嗅覚での官能を味わえないのです」 「でも……他の誰かが反応するかもしれないじゃ……ないの?」 センリは頭を横に振り、悲しそうな瞳で美咲の頬に手を滑らせる。 「美咲はこの国で、誰に会いましたか?」 「え、と……マリカと、マスカーレイド。後はセンリ……」 「貴女には見えないだけで、もっと住人はいるのです。しかし、縁のない住人は貴女の瞳には映ることがなく、更に各々が持つ香りに反応するのは“一人の住人に対して一人の誰か”だけでしかいないのです。ですから貴女に縁のある住人は、現段階で私を含めた三人なのです」 「……」 「貴女と出会う確立は広いこの世界で、一粒の砂を探すのと同じくらい途方もないことなのです。解りますか?たった一人の愛する人を、長い時をかけて探し、待ち続ける事の苦しさが」 「それは……」 「お願いです、私を拒絶するような事はしないで下さい。お願いします」 下げられていた顔が上がると、悲痛な表情のセンリが憂いを秘めた瞳で見つめている。 そんなセンリを見た美咲は心が痛くなった。 遠慮がちに伸びてきたセンリの手に身体を跳ねさせたが、抵抗しようとはせず、優しく抱き寄せられた感触に微かに胸が高鳴った。 僅かばかり芽生えた“愛しい”と思える気持ちを、素直に受け止めようとしていた。 美咲の首元に埋めてきたセンリの頭をたどたどしく撫で、美咲はあやふやな心で想いを態度で表した。 |