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道化の国
渦巻く不安


「一体何がどうしたのでしょうか…」


一人フィールドに戻ったセンリは疲れた声で呟く。
突然豹変したマリカの態度を訝しげに思いながら、椅子に腰を下ろした。

美咲の意識が戻らない今、マリカの理解しがたい行動にセンリは益々頭を悩ませる。
大事だと思える存在が思わぬ形で禍に成り代わってその身に降りかかり、様々に思い浮かぶ策もそれらに邪魔をされて考える事もままならない。


「さっき騒がしかったけど何かあったの?」

「マスカーレイド…、……いえ何も。ユリアはどうしていますか?」


マリカの様変わりを説明しようと思ったセンリだったが、美咲の事で心配をかけ、ましてユリアまでも危険に晒されているかもしれない事態にこれ以上の混乱を招きたくないと思い言葉を濁した。


「ん、ゆっくり眠ってる。何も変わりない」

「そうですか…」


天井を仰いでため息を吹き付けたセンリは瞼を閉じてマスカーレイドの言葉を聞き、ユリアの無事に安堵する。
今の状況でただの一つでも安心の材料があると言う事は、センリにとって僅かでも安らげた。


「少し休んだ方が良いよ、無理してたらセンリの方がまいるよ」

「…そうですね」


しかしマスカーレイドの言葉に、心身に負担をかけていた疲れが声となって漏れる。
不意に出てしまった言葉ではあったが、それほどまでに自分は追い詰められているのだと簡単に悟る事が出来た。

徐に立ち上がったセンリは、マスカーレイドと視線を合わせる事なくリビングを出て行った。


「…何がどうなってるんだよ、……マリカ」


センリの背中を見送るマスカーレイドは、マリカが来ていた事を知っていた。
悪いとは思いながらも聞き耳をたて、フィールドでの話を一部始終聞いていた。
ただならぬマリカの声に二人の後を追いたい衝動にかられたが、ユリアを一人残して行く事が出来ず臍を噛んでいた。

鎌をかけるマスカーレイドではあったが、センリは何もなかったように平静を装いそこで話を終わらせてしまった。
それ以上センリに追求する事を止めて諦めたが、釈然としない様子のマスカーレイドはユリアが眠る部屋へと足を向けた。


「ユリア、ごめん起きて」

「う…ん…、マスカーレイドさ……?どうしたんですか…?」


眠そうに瞼を擦り、ゆっくりと起き上がるユリアはベッドに近寄るマスカーレイドに首を傾げた。


「これからマリカに会いに行くよ」

「え…、今ですか?」

「そう、今すぐ。説明は移動しながらするよ、さぁ行くよ」


マスカーレイドは覚醒しきれないユリアの手を取り、急ぎ足でフィールドを出て行った。



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