道化の国
呼応に込められた願い
「センリさん、お帰りなさい」
フィールドに戻り美咲がいるベッドルームへ向かったセンリ達を迎い入れたのは、憔悴しきったユリア。
一向に変わる様子を見せない美咲に視線をやり、かぶりを振る。
「ユリア疲れただろう、君も少し休むと良いよ」
「大丈夫です、センリさんの気持ちを考えたら私なんて…」
顔を覗き込むマスカーレイドに頼りなげな笑顔を見せ、ユリアは深いため息をついた。
「ユリアありがとうございます。僅かですが打開策を持ってきたので試します、少しでも休んでください。貴女に無理をさせたとあっては、私が美咲に怒られてしまいますから」
気遣いを見せるセンリはユリアの背を押し、マスカーレイドの前に差し出した。
「ユリアに無理をさせたら美咲の前に俺が怒るって」
「マスカーレイドに怒られても、私は痛くも痒くもありません」
「……そう」
苦笑いでいながらも半分不貞腐れたマスカーレイドは短く返事をし、ユリアの肩に腕を回し扉に向かって歩いて行った。
「マスカーレイド、油断は禁物です。ユリアも希望の光です、もしユリアまでサザーランドに狙われているのであれば…」
「…わかった、肝に銘じるよ。部屋、借りるね」
「どうぞ、好きな部屋を使ってください」
センリに背中を向けたままマスカーレイドは軽く手を上げ、不安そうに後ろを振り返るユリアを連れてベッドルームを後にした。
「今はユリアだけでも守ってやらなくてはなりません。美咲の二の舞には…」
「そうね。マスカーレイドもセンリの言わんとする事を理解してるから、センリのフィールドに留まる事を選んだろうし」
静かに傍観していたマリカがベッドを覗き込む。
変わらず青褪めた顔の美咲が瞳を閉じたまま眠っている。
「美咲、皆貴女の目覚めを待っているわ。早く起きなさい…」
額にかかる髪を払い、触れた肌がとても冷たく感じたマリカは痛々しい思いで手を固く握った。
「…これから直接呼応させてみます。これからどの様な変化が起こるのかわかりませんが、出来る事をしていきましょう」
ベッドに腰を下ろしたセンリは横たわる美咲を抱き起こし、力強く抱き締めた。
「お願いです美咲…、応えてください。貴女を……愛しています」
ありったけの想いを込め、センリは美咲の髪に顔を埋めた。
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