道化の国
夢に巣食う悪魔2
一通り目を通したセンリはマスカーレイドに本を手渡し、側にあった椅子に腰を下ろし考え込むように手を組んだ。
「マリカ、何処に書かれてるの?」
「此処よ、サザーランドの章を見て」
マリカに言われた箇所を捲り、マスカーレイドも読み始める。
「希望の光特有の輝きは、サザーランド一族には何にも換え難い宝石…。希望の光の夢と同調させ、次第にその夢を乗っ取り希望の光もろとも手中に収める…」
「サザーランド一族は希望の光と夢を同調させる際、悪夢を見せると言われてるわ。美咲もずっとうなされていたって言うじゃない」
「じゃあ美咲は…、このサザーランドに夢を乗っ取られたって事?」
神妙な顔で頷くマリカは、静かに思案するセンリに視線を向けた。
「美咲と強い繋がりがあるのはセンリ、貴方だけよ。美咲の持つリングが鍵になると思うわ…」
「…それはずっとやってはいますが…、美咲の意識を捉える前に何かに邪魔されて……」
動こうとしないセンリは瞼を閉じ、小さく呟く。
まるで祈るような姿に、マリカとマスカーレイドは言葉をなくしてしまう。
本がひしめく室内は薄暗く、センリの横にあるテーブルからランプの光が揺らぐ。
ランプに照らされたセンリからは影が落ち、悲壮を漂わせていた。
重苦しい空気がセンリの心の内を曝け出しているようで、二人は心配そうにその場で立ち尽くす。
「美咲の側でもう一度意識を探してみます。美咲の身体があるなら、直接呼びかけて精神呼応させてみましょう。その方がもしかしたら上手く出来るかもしれません」
全てが手探り状態の中、光明とも思える策を発するとセンリは漸く重い腰を上げた。
僅かな希望を胸に、眠る美咲がいるフィールドへ颯爽と歩いて行った。
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