道化の国
行方知れずの意識2
「貴方の交友関係を当たってもらいたいのです。特に女性に」
「何で女の子に?」
女と接触すると聞いたユリアは僅かに顔を俯かせ、表情を暗くさせている。
ユリアの変化に気付いたマスカーレイドは目の前の顔を何度も往復させ、焦りの色を見せる。
「女性とは、えてしてお喋りが好きです。情報通な女性の一人や二人、マスカーレイドのお友達にいますでしょう?」
曇るユリアの表情に気付いたマスカーレイドはオロオロとするものの、センリの言葉に頷き腹を括った。
「まぁ…そうだけど…、美咲のためだし…。わかったよ、ユリア一緒に行こう」
「ユリアは置いて行ってください」
「え、どうして?」
ユリアの肩を抱きフィールドを後にしようとすると、センリに呼び止められ振り返った。
マスカーレイドを手招きするセンリに近寄れば、ユリアに聞こえないよう小声で耳打ちをする。
「他の女性と話をしているマスカーレイドを、ユリアは見たくないと思いますけど?」
「じゃあどうしてユリアの前でそんな用事頼むんだよ!」
ヒソヒソと話をしていたセンリに対し、マスカーレイドは突然大きい声で口元を引きつらせる。
しかしそんなマスカーレイドをものともせず、センリは笑顔のまま平然とした口調で答えた。
「ちょっとしたストレス解消です」
呆気に取られるマスカーレイドは言葉をなくし、話の内容を掴みきれていないユリアは首を傾げて笑顔のセンリにつられて笑った。
「…しかし、ユリアには美咲についていてもらいたいのです。私は私で調べたい事もありますので、ずっとついてやる事が出来ませんから」
「……わかりました、私で出来る事があるなら……。美咲さんを助けられるのであれば、協力させてください」
一瞬戸惑いを見せたユリアだが、しっかりとした返事をしてセンリの言葉に同意した。
穏やかでいながらも強い芯を映したユリアの顔。
「…ユリア、すぐ戻るからね。何かあったら俺を呼んで、どんな事があっても駆けつけるから」
「わかりました。マスカーレイドさん…、気をつけて」
自分のはっきりとした意思を見せたユリアに異論を唱える事など出来ず、マスカーレイドはユリアを抱擁し、しぶしぶ一人でフィールドを去って行った。
「此処にある物は自由にしてもらって構いません。では私も出掛けてきますので、美咲の事をよろしくお願いします」
タキシードの襟を正し、センリはベッドに近付いた。
「美咲、早く目覚めてください…。私は貴女がいないと…」
冷たい手を握り心弱そうに呟いたセンリは、瞳を固く閉じ押し黙る。
先ほどまでテキパキと指示を出していた悠然たる態度ではなく、焦燥したセンリがそこにいる。
悲壮感漂うセンリの背中を眺めるユリアは、切なさが残るベッドルームを後にした。
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