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道化の国
滲み出る邪な思い



目の前にあるのは、見慣れた光景。
美咲が現われてから、いつも見る、二人の寄り添う姿。


「はぁ。」


羨ましい・・・。

だって、センリのあんな表情。

美咲が来てからは、いつも見せる優しい顔。

美咲が来る前には、見せた事のない慈愛の表情。


今までなら笑ってても、それは表面上だけの事で。
希望の光は、凍付いたあのセンリまで溶かす。

見てハッキリと美咲効果がよくわかる。


「俺にも希望の光が現われたら、あんな顔するのかなぁ?」

「あん?何言ってんだ、マスカーレイド狂ったか?」


隣りを歩くユーマにそんな事を言われるとは思わなかった俺は、ガックリと肩を落とした。


「俺が狂うわけないだろ、狂ってるのはユーマ。」


それから何かギャンギャンとユーマは吠えてたが、俺はぼんやりと前方を歩く二人に視線を戻した。

あぁ、何だろう。

仲良さそうに歩く二人を見たくないのに、目が行ってしまう。
なんだか、何処か切ない気持ちに似た何かが胸を締め付ける。


羨む気持ちかなのか。

悔しい気持ちなのか。


美咲が俺の希望の光だったら、どうなんだろうと思う。

邪な考え。


「よし、ユーマ。たまには俺と飲むか。」

「飲むより、食いたい。」

「どっちにしてもザルだもんな。・・・・美味い料理、出す店に行くか。」


何だか独りで居たくない。
いつもなら女を引っ掛ける所だけど、口説く様な甘い言葉も今は言う気分にならない。


「マリカも行くか?」

「うーん、今日はパスするわ。たまには男同士で行ってきたら?」

「男同士って言うか、凶暴なペットを連れ歩く気分。」

「誰がペットだ!!」


俺の台詞にユーマは、噛み付いてくる。
やっぱり凶暴なペットだ。

でも馬鹿な子ほど可愛いって言うけど、ユーマが正にそう。
頭を撫でてやれば不満気な顔で眉をしかめている。


「行くか・・・。センリ、美咲、またね。」


前を歩くセンリ達に声をかけ手を振れば、美咲は手を振って応えてくれる。

センリは頷くだけ。


もうちょっと愛想あっても良いのに。

ね、ほら。
美咲には、あんな顔見せるのに。

立ち止まったままの美咲に、センリは肩を抱き寄せ、歩くよう促してる。
美咲の笑顔は光に満ち溢れて。

そんなに早く帰りたいのかよ。


「俺も出逢えるのかな・・・。」


誰にも聞こえないような小さな呟き。


俺の希望の光に届けば良いのに。


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あきゅろす。
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