話を変えるべく、美咲は口を開く。
「あ、あのぅ、マリカは彼氏とかいるの?」
妙な話題かもしれなかったと思うも、センリ達の話よりは良いかと恥を忍ぶ。
「彼氏ねぇ……いないわ」
「マリカこんなに色っぽくて綺麗なのに!?」
「あら嬉しい事言ってくれるわ。可愛いわね美咲」
マリカはよしよしと、犬猫を慈しむかのように美咲を優しく撫でる。
それを見ていたセンリは、さも触るなと言わんばかりの視線をマリカに向けた。
気付いたマリカは挑発するように、勝ち誇ったような顔で、センリを見ながら美咲に抱き付いた。
「美咲は本当可愛いわ、センリには勿体ない」
「マ、マリカ、苦し」
マリカの大きな胸に顔を埋める形になり、息が出来ない美咲は虫のように手足をばたつかせた。
「そろそろ離れてくれませんか?美咲が潰れます」
美咲をマリカから剥がし、センリの腕の中にスッポリと収める。
「ねぇ、話を割り込むようで悪いんだけど、前に一緒にいた男は彼氏じゃないの?」
どうやらマスカーレイドはマリカと男が一緒にいる現場を見たらしく、仲良さそうだったのにな〜とブツブツ何か言っている。
「マスカーレイドが見た男は、どんな奴だったかしら?」
「こう……背が高くて、紫色の長い髪の男。俺には負けるけど、なかなかの男前だったよ」
身振り手振りでその男の容姿を伝えるマスカーレイドは普段仮面をつけている為、素顔など知る由もなく。
「……あぁアレ?彼氏でも何でもないわ。ちょっとつまみ食いしただけ。でも身体の相性最悪で、ムカついたから一発お見舞いしてあげたわ……あの後にね」
ユーマはマリカの怖さを知ってるのか、青ざめた顔でいる。
そんなユーマを横目にマスカーレイドは続けた。
「ちなみにどこに一発見舞ったんだ」
「決まってるでしょ?私が男を蹴る時は金的」
得意そうに、長い足をスラリと投げ出し、ヒュンと空を切る。
「マリカあまり過激な発言をすると、美咲の顔から火が出ます」
マスカーレイドとユーマは痛みを想像して、マリカに蹴られた男に同情をしないではいられないでいた。
一人ドキドキする美咲は、マリカに何て言って良いかわからずティーカップを傾ける。
「マリカが一番サディストですね、他人の事とやかく言えませんよ。これじゃあ……」
「同じく」
「俺もそう思う……ってマリカ!俺を睨むんじゃねぇ!!」
気付けば周りは全てサディストで囲まれた美咲。
自分は無事でいられるのかと、苦笑いを零すしかなかった。