道化の国
地獄の使者3
男の呻き声と共に鮮血を撒き散らすと、マスカーレイドのカードから血が振り払われた。
崩れ落ちる男の背後には、マスカーレイド達を遠巻きに見ていた女達が悲鳴を上げて怯えている。
泣き喚く女達は手を取り合い、その場を走り去っていった。
残された男は空気が漏れるような呼吸を繰り返していて、まだ息がある様子だ。
小刻みに震える手をマスカーレイドの足元に伸ばし、もがく様に足を掴もうとする。
「汚いから触らないでくれる?」
「ひっ!・・ぐ・・ぅ・・。」
マスカーレイドは足を軽く上げ、男の手から逃れる。
そして躊躇する事無く、手の甲に左の踵を食い込ませた。
踏み躙るように足を動かし、踏みつける。
骨が軋み、痛みを訴えようとしているのか、声にならない声を上げる男は血反吐を吐き顔を鮮血で染めた。
マスカーレイドは冷徹な眼差しで男を見下ろし、口元を吊り上げた。
「お前が俺を怒らせる様な事をするから悪いんだ。」
手を踏みつけたままマスカーレイドの右足がゆらりと上がり、男の顎を押した。
首を逸らし傷口を広げるように、徐々に力を込めてゆく。
止め処なく流れる血は男の顔色を悪くさせ、最早抵抗すら出来ないほど力も弱々しくなっていった。
マスカーレイドにされるがままに顎を突かれ、男の息が事切れそうになると複数の足音が近付いてきた。
「マスカーレイド、お客様ですよ。」
マスカーレイドが行っていた行動を一人冷静に眺めていたセンリが目配せをする方を見やる。
先ほど逃げて行った女達と共に、三人の男が焦りと怒りを露に走り来る。
マスカーレイドの所業を見た男達は怒号を上げ、女達は血に塗れる男を見ては再び悲鳴を上げた。
「煩い方々ですね・・。」
呆れた様に呟いたセンリは喚く女達に辟易し、片眉を上げた。
「彼女達はどうします?あの時放っておかないで、口止め程度の脅しでもかけておいた方が良かったですか?」
「そうだねぇ・・、でも・・可哀想な事だけはしないでね。」
「・・・・・私の役目なのですか?」
「何のためについて来たんだよ。」
僅かに口元を歪ませ、マスカーレイドはセンリに振り返った。
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