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道化の国
地獄の使者2


正面に顔を戻したマスカーレイドの背に向かって、センリはつられるように口元を吊り上げた。


「きっと・・そうかもしれませんね。」


センリの言葉が聞こえたのか聞こえないのか、マスカーレイドは振り向く事無くひたすら前を進む。

下卑た笑いをした男に向かいながら懐に手を忍ばせ、カードケースを取り出す。
口元はもう笑ってはおらず怒りの冷気を纏い、目の前に近付く男へと鋭い視線をやった。

ただならぬマスカーレイドの気配に気付いた男は愉快そうにしていた会話を止め、怪訝な顔でマスカーレイドを見る。
絡みつく女をぞんざいに扱い力で跳ねつけ、一歩前に踏み出した。


「お前は確か・・、あの緑の髪の女と一緒にいた仮面の男・・。」

「へぇ・・、俺の事覚えてたんだ。」

「まぁな、あの女が印象深いからなぁ・・・。」


思い出すように下種な笑みを見せる男に、マスカーレイドの心が一瞬にして弾けた。

ユリアと共に聞かされた、忌まわしきユリアの過去。
その時の映像がマスカーレイドの脳裏に流れ出て、そしてその男の馬鹿にした様に笑う顔が蘇る。

歪んだ顔で笑う脳内での男の顔と今目の前で見る男の顔が同調し、あの時の怒りが重複し膨れ上がった。


「許さない・・。」


無防備にしていた男の懐に飛び込み、瞬時にカードを首に押し当てた。


「ユリアを馬鹿にするな。」

「なっ!?」


虚を突かれた男は目を見開き息を呑む。
咄嗟に起こされた行動に男の思考は停止してしまい、マスカーレイドから向けられる視線に恐る恐る合わせた。


「あの時は言わなくても良い事を、わざわざ俺達に教えてくれてありがとう。」


押し当てたカードを微かに滑らせ、男の首に細く紅い線を描く。


「だから・・。」


マスカーレイドの殺気に当てられた男は突き刺さる視線から逃れる事が出来ず、勝手に震え上がる身体に戸惑っていた。
僅かに保たれた均衡は、マスカーレイドの言葉で終りを告げる。


「これはお礼だよ。」




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