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道化の国
地獄の使者1


穏やかな街並みから細い路地へと歩みを進める。
入り組んだ路地は来る者を惑わせようとしているのか、方向感覚が失われそうなほど複雑に交わっている。

同じような壁に挟まれ、天上から見下ろしてくる空のぼんやりとした明るさは薄くしか通りを照らしていない。
それでもセンリ達の足取りからは一切の迷いは見えなく、惑う事無く目的の場所へと突き進んでいった。

細い路地を抜けると、表通りとは違った雰囲気の大きな通りへと出る。
美咲と出逢う前にセンリ達もたまに来ていた、懐かしい街並み。

荒くれ者が闊歩する、胡散臭い佇まいの店ばかりが軒を連ねる。
漂うアルコールの匂いや、死んでいるのか生きているのかさえもわからない人間が隅に転がっている通り。


懐かしさが込み上げる以前に、ざわめく血が二人の身体を這い登る。

人間の醜さや浅ましさ。
欲に溺れきり、薄汚く堕落した人間の集大成。

それらがあちこちに垣間見られ、こんな場所に自分も染まっていたのかと思えば顔を背けたくなる。
おぞましく不快な気分になる空気に、センリは眉をひそめ嘆息した。


「センリ・・、アイツ・・。」


マスカーレイドは歩調をゆっくりとしたものに変化させ、センリに声をかけた。
指はささなくとも目立つ存在の一人の男と、その男にへばりつく女が二人。

女の甲高い笑い声は嫌でも耳につき、居心地の悪さを増してくる。

美咲に出逢う前であればそれほど気にならなかった光景。

しかし美咲を知ってからと言うもの、美咲以外の女は人間にすら見えず。
センリには異形の者としてしか、その瞳に映らない。


「あの男、わざわざ俺にユリアの過去を話した男・・。」

「・・・そうですか。」


二人の女に囲まれた男は豪快な笑い声で、女の身体を触ってはその一時を楽しんでる様子だ。
ただでさえ欲望渦巻く雑多な雰囲気に苛立っているマスカーレイドに、男の笑い声は追い討ちをかける。


「まずはアイツから・・。」


ゆっくりと歩いていたマスカーレイドは立ち止まり、深い息を吸い込み細く吐き出すと言葉を発した。


「死にたい奴なんだろうね・・、これから殺されるって言うのにウロウロしてるなんてさ。」


馬鹿な奴だよね・・と呟いたマスカーレイドは後方にいるセンリに軽く顔を向け、不敵な笑みを見せた。





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あきゅろす。
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