道化の国
燻る炎
美咲をマスカーレイドのフィールドに送り、いまだ眠るユリアに気遣い静かにフィールドを後にしようとする。
何かモノを言いたそうにしている美咲に声をかけたい衝動に駆られるセンリだったが、そこで声をかけた所でこれから行おうとしている事を素直に話す事など出来るわけもなく。
柔らかな笑みで美咲を抱き締めてやる事だけが、今のセンリには出来る精一杯だった。
「すぐに戻りますから、お利口にしていてくださいね。」
頭に乗せた手を頬に滑らせ柔らかな線をなぞり、名残惜しそうに手を離す。
そして来た道を引き返しフィールドを出て行った。
フィールド外へ出てすぐにマリカを呼び出し、簡潔に話をする。
その簡略化された話しを聞いただけでマリカはマスカーレイドの気持ちを察し、騎士に情報収集を頼む事に快諾した。
「情報収集なら出来るだけ人を集めた方が良いわね。」
「その方が良いですね。」
「悪いね、マリカ。」
「借り一つね。」
「・・・高くつきそう・・・。」
口角を上げマスカーレイドを一瞥するマリカが騎士達を呼ぶと、瞬く間に白い装束に身を包んだ男達が現れた。
「悪いけど力を貸してちょうだい。説明はマスカーレイドから聞いてもらえる?」
頷く騎士達はマスカーレイドの元へと赴き、一礼をする。
「俺の私用で悪いんだけど、ある人物達を探してもらいたいんだ。二人の男の顔はわかる、その内の一人の交友関係をあたってもらいたい。ユリアに関係する男達を洗い出してもらいたいんだ。」
マスカーレイドはユリア、そして自分が出逢った男達の特徴を自分が知り得る全てを教えた。
ユリアの身に起こった不幸に関わる全ての者を排除するため、考えたり口にするだけで怒りで身体が震え上がるほどの話を騎士達に話した。
それから話を聞いた騎士達はマリカの指示の元、それぞれが役割を果たすため迅速な行動をみせた。
騎士達はあらゆる人脈と情報収集に長けた能力などを駆使し、僅かな時を経て答えを提示する。
紙に書かれていたのは人物名、それに関わる交友関係に行きつけの店。
全て洗いざらい調べ上げられた男達の情報は、紙面で丸裸にされている。
ユリアを犯したであろう人物や、それに関わったであろう人物の名前を食い入るように見つめるマスカーレイド。
小声で何度も復唱し、頭の中に叩き込む。
勝気な笑みを見せるマリカに見送られ、二人は歩き出した。
紙を握り締めていたマスカーレイドは、目の前を見据えて靴音を鳴らす。
邪な心に染め上げられた愚かな輩を排除するため、揺らぐ怒りを体内で燻らせて。
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