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道化の国
惚気話


「怒りのままに動いた所で、上手く立ち回れませんよ。」

「よく言うよ、センリだって・・・。」


皮肉を言うマスカーレイドは尚も優雅さを保つセンリを一瞥すると、見つめてくる冷ややかな目線に言葉を詰まらせた。


「俺も慌ててるつもりはないんだけどさ、どうしても・・・、一刻も早くユリアに安心をあげたいんだ。だから・・・。」

「気持ちはわかりますが、まずはユリアを穢した男達を捜す事が先決です。」


無言で頷くマスカーレイドは心を落ち着けようと、仰いで深呼吸をする。
そして仰いだままセンリに言葉をかけた。


「俺・・、ユリアには幸せになってもらいたいんだ。俺の手で、ずっと笑っていられるようにしてやりたいんだ。」


センリはカップを傾け、マスカーレイドの何処か哀しみを秘めた穏やかな声を聞く。


「だから・・、ユリアを悲しませるせるような奴等は許せないんだ。センリだって俺の気持ち、わかるだろ?」

「それはわかります。美咲を悲しませる者がいるならば、どの様な手段を取っても排除します。」


飲み終えたカップをソーサーに戻し、センリは向けられた視線に真剣に応えた。


「制裁を加える事が例え悪だとしても、私は美咲のためならいくらでも汚くなれます。卑怯だと罵られたとしても、それは褒め言葉でしかありません。」

「俺だって同じだよ。ユリアのためならどんな悪事も厭わない。」

「しかし、美咲やユリアの性格を考えると大っぴらに出来るわけはありませんしね。簡単に悪事に手を染めさせないとは思います。・・ばれない様にしないといけません。」

「そうだなー。」


苦笑するマスカーレイドは何処か楽しげに髪を掻き上げ、僅かに見せたセンリの笑顔に心の緊張が解けてゆく。


「お待たせ、・・・何、何楽しい話しをしてたの?」


美咲が出て行く前にあった重かった空気が軽くなっている事を不思議に思い、センリに問いかけた。


「楽しい話と言うか・・、単なる惚気話ですよ。準備が整いましたね、では行きましょうか。」

「よし、行くか。」


立ち上がったマスカーレイドからは無駄に入っていた力が抜け、マスターキーリングが光る手を掲げ大きく空間を切り裂いた。



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あきゅろす。
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