道化の国
思うところ3
「えー・・、声疲れてる・・・?」
「えぇ、とても。」
「はは、参ったな。」
自嘲するマスカーレイドは大きく息を吐き出し、ソファに背中を預けた。
「なんかさ、こんなにユリアに一喜一憂されると思わなかったから・・、自分の事がいまいち掴みきれてないんだよね。声が疲れてるなんて、センリに言われるまで気が付かなかったし。」
「良いじゃないですか。自分が解らなくなるほどのめり込める存在など、なかなか接する機会のない事ですよ。ましてそれが希望の光なのですから、私達はとても幸運だと思います。」
「そ・・だよな・・。本当・・、幸運だと思うよ。出逢えた奇跡に感謝しなくちゃだな・・。」
「貴方が落ち込んでいては、ユリアまで悲しむ事になるのですから・・。その調子で気分を上向きにしていってみてはいかがですか?」
何処か迷いが吹っ切れたようにマスカーレイドは背伸びをし、センリの問い掛けに頷いた。
「そうする、俺が暗くなってちゃユリアを楽しませてやる事も出来ないし。」
「その意気ですよ。」
互いに僅かに笑みを見せると、センリは立ち上がった。
「帰る?」
「はい、美咲に逢いたくなりました。」
「まったく・・。」
肩を竦ませるマスカーレイドは毎度の事だと思いながらも、何処か楽しそうにしている。
「センリ。」
「何ですか?」
「色々助かったよ、ありがとう。あと・・これも。」
貰ったマスターキーリングを指先で摘んで見せ、マスカーレイドは頬を緩ませた。
「貴方にお礼を言われると、背中が痒くなりますね。」
「よく言うよ。美咲に宜しく言っておいて。」
「わかりました。貴方もゆっくり休んでくださいね。」
背中越しに片手を上げたセンリは、マスカーレイドのフィールドを後にした。
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