道化の国
思うところ2
「あのさ、センリ。」
マスカーレイドはポケットから銀色に鈍く輝く指輪を掌に乗せ、センリの前に突き出した。
「これ、持ってて。」
「マスターキーリング・・。」
差し出された指輪を手にし、センリはマスカーレイドを視線を向けた。
「ユリアにいつでも会いに来てって、美咲に伝えておいて。」
「これは私が持っていますので、今度美咲と一緒に来ます。」
「どっちでも良いよ。まったく・・、相変わらずだよねセンリは。」
此処に着てからというもの、マスカーレイドからは重苦しい雰囲気しか纏っていなかった。
しかし張り詰めていた緊張が僅かに解け、マスカーレイドは苦笑いではあるが頬を緩ませた。
「では・・、私の方からも渡しておきましょうか・・。」
センリはユリアが希望の光とわかってから事前に用意していたマスターキーリングを取り出し、目の前のテーブルに静かに置いた。
「これはユリアに渡してください、ユリアなら歓迎します。美咲も喜ぶでしょうし。」
「うわー、センリから貰えると思わなかったよ。妙に感慨深いものがあるよね。」
「私は貴方に渡すわけではありません、ユリアに渡すのですよ。」
「わかってるって、ユリアも喜ぶよ。」
マスカーレイドはセンリが置いた指輪を手に取り、しげしげとそれを眺めた。
沈んでいた空気が柔らかくなっていき、マスカーレイドの声も幾分か元気のあるものへと変化を見せた。
「ともかく、貴方も少し休んだ方が良いですよ。神経を張り巡らせ過ぎると、ユリアよりもマスカーレイドの方が先に参ってしまいます。」
「大丈夫だよ、俺は。」
センリの言葉を否定し、マスカーレイドは指輪を眺めて軽く答える。
「いくら表情が仮面に隠れてても私にはわかりますよ、声が疲れています。その様な声ではユリアの方が気兼ねしてしまいます、ですから貴方も少しは気持ちを落ち着けた方が良いです。」
マスカーレイドは一瞬虚を突かれた様に動きを止め、そろそろと片手で顔を隠し天井を見上げた。
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