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道化の国
思うところ1


動揺が治まらないユリアを抱き寄せ、マスカーレイドはフィールドへと戻った。

申し訳なさそうに身体を竦めたままベッドに潜り込んだユリアはマスカーレイドに背を向け、言葉を交わす事なく声を押し殺して泣いていた。
マスカーレイドはそれに気付いてはいたものの、今はソッとしておこうとユリアの頭を一撫でしベッドルームを後にした。


ベッドルームの扉を閉め、そこに背を合わせると憂苦な気持ちが一気に押し寄せ、マスカーレイドの心は重くなる。
心を掻き乱され、物事を考えようとも思考回路すらまともに動こうとしない。

マスカーレイドは覚束ない足取りでフィールドを出て行った。
そして無意識の内にセンリを呼び出し、無言のまま怪訝そうにするセンリの腕を引いてフィールドへと戻っていった。

フィールドに来たと言って何も喋ろうともしないマスカーレイドを、ゆったりと腰を下ろしたセンリはため息をついた。


「どうしたのですか、私をフィールドに連れてきて。」


黙って立ち尽くすマスカーレイドに声をかけるが、返事は帰ってくることがない。


「何も喋らなければ、どうにも出来ませんよ。何があったのか、話してみてください。」


崩れ落ちるようにソファ座ったマスカーレイドは頭を抱え、小さな声で漸く話し始めた。


先ほどまで幸せに包まれていた二人に起こった出来事を説明した。
静かな部屋だからこそ聞こえる程度の、耳を傾けていないと聞き逃してしまいそうなほどの小さな声で。

しかしそれは弱々しい声ではなく、苛立ちと棘の含んだ声。

全ての話を終えたマスカーレイドは依然頭を抱えたままで、センリに顔を見せようとしない。

マスカーレイドが見せる態度にある程度の事情があったのだろうと察してはいたものの、漸く落ち着きを見せ始めたユリアには心を抉られるような気持ちであっただろうと考えた。
何よりも一番聞かれたくないであろうマスカーレイドの前で、出逢う前の聞きたくもない話しを強引に関係を持たされた男によって強制的に聞かされたのだ。

それを聞かされて傷ついているのはユリアだけではなくマスカーレイドも同様で、取り戻しつつあった平穏は見るも無残にその第三者の男によって粉々にされてしまった。


「では、ユリアは今・・。」

「ベッドにいる・・、泣き疲れて眠ってるかも。」

「そうですか・・。」

「本当はそっちに行って話そうかと思ってたんだけど・・、今はさすがにユリアを一人にしておけなくてさ。」


マスカーレイドの言い分に頷き同意をしたセンリは、ユリアがいるであろう方向に視線を動かした。




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