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道化の国
罪の意識2


「マスカーレイド・・・さん・・・。」


顔色を悪くするユリアはマスカーレイドの手を弱々しく引き、俯いたまま小声で声を発する。
心配そうに覗き込むマスカーレイドは男をから視線を逸らし腰を屈めた。

男はマスカーレイド達に少しの距離を置き、腕組をして見下すように話し始めた。


「この女の具合は最高だったな。邪魔が入らなければ、俺のフィールドで飼おうと思っていたのにな。あん時は三人で取り合いになったからな、それがなければ逃がすことなくお前を俺のペットに出来たのに・・・。それがお前の新しいご主人様か?」


男から発せられた長々とした台詞で、マスカーレイドは一瞬にして悟った。

出逢った時につけられていた、無数の紅い痕。

マスカーレイドの脳裏に一気に蘇る、狂おしいほどの憎しみの感情。

ユリアは聞きたくないとばかりにマスカーレイドから手を振り解き、耳を塞いで蹲った。
きつく閉じられた瞳からは涙が滲み出て、唇を噛み締めている。

そしてうわ言のように、止めて、止めてと繰り返し呟き、今にも消えてしまいそうなほどに萎縮していた。


「この娘は俺の希望の光、ご主人様とかの関係じゃない。俺の宝物を・・・侮辱するの?」

「・・希望の光か・・・、道理で魅かれるはずだ・・・。やっぱりあん時、奴等を殺してでもこの女を手に入れとくべきだったな。」


薄笑いを浮かべる男は言うだけ言うと踵を返し、その場を立ち去った。

今すぐにでも男を追いかけて殴りたい衝動に駆られるマスカーレイドだったが、怯えるユリアを置いてなど行けるような状況ではなく険しい表情で男の背を見送った。


「イヤ・・・聞きたくない・・・、・・ヤ・・・。」


マスカーレイドは立ち去る男のから視線を外し、蹲ったまま頭を抱えるユリアの前にしゃがみ込んだ。


「ユリア。」

「ご・・ごめんなさい、ごめんさない・・・、マスカーレイド・・・、私汚い・・・、ゴメン・・・。」


嗚咽混じりに謝罪を繰り返すユリアからは涙が零れ落ち、地面を色濃く濡らしてゆく。
マスカーレイドはそんなユリアの顔に手を伸ばし、流れる涙を指で拭った。


「ユリアは汚くないよ。遠くから見てもわかるくらい、光り輝いている。とても綺麗だよ・・・。」


ユリアは大きくかぶりを振り、マスカーレイドの言葉を身体全部で否定する。


「私は・・私は・・・・あんな男達に身体を自由にさせてしまったの・・・、私は・・・。」

「俺も悪かったんだ・・、希望の光なんて夢物語だと思ってユリアを探そうともしなかった・・・、俺の罪だ。」

「・・でも!」


マスカーレイドはユリアの台詞を遮るように身体を抱き寄せた。


「俺だけを恨んでくれたらいい、・・ユリアは自分をこれ以上追い詰めないで。お願いだ、ユリアの傷は俺の命をかけて一生償うから、だから俺の側にずっと居て・・・。」

「マスカーレイドさん・・・。」



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